Home Japan Japan — in Japanese 行政長官に親中派の林鄭氏初当選 亀裂拡大も

行政長官に親中派の林鄭氏初当選 亀裂拡大も

328
0
SHARE

香港特別行政区政府トップの 行政長官選挙が26日投開票され、 親中派で香港政府ナンバー2の 政務官だった林鄭月娥氏(59)が、 同じく親中派で前財政官の 曽俊華氏(65)▽無党派で元裁判官の 胡国興氏(71)を破って初当選した。 1997年の 香港返還後、 初の 女性長官。 任期は5年。 民主派は中国による「選挙介入だ」 と反発しており、 香港社会の 亀裂がさらに深まる可能性がある。
香港特別行政区政府トップの行政長官選挙が26日投開票され、親中派で香港政府ナンバー2の政務官だった林鄭月娥氏(59)が、同じく親中派で前財政官の曽俊華氏(65)▽無党派で元裁判官の胡国興氏(71)を破って初当選した。1997年の香港返還後、初の女性長官。任期は5年。民主派は中国による「選挙介入だ」と反発しており、香港社会の亀裂がさらに深まる可能性がある。
「私は中央が信頼してくれる人物だと思う」。777票で次点の曽氏らにダブルスコアの差を付けて圧勝した林鄭氏は当選後の記者会見で胸を張った。開票作業にも自ら立ち会い、時折笑みを浮かべ、余裕さえうかがわせた。
得票数は前回選(2012年)の梁振英氏(62)の689票を大きく上回った。梁氏の元で手腕を振るってきた林鄭氏は、選挙委員580人の推薦を得て立候補したが、無記名投票のため親中派の一部が、長年、経済・財政担当を務めた曽氏に流れるとの観測もあった。だが、選挙戦終盤には態度未表明だった親中派の一部業界団体などが林鄭氏への支持を表明し、地滑り的勝利をもたらした。22日には富豪の李嘉誠氏が「中央も信任する人物に投票する」と述べて支持を示唆し、勝利を確実にした。
圧勝した林鄭氏だが、若者らの人気は乏しい。14年に民主的な選挙制度の導入を求めた大規模デモ「雨傘運動」では、香港政府代表として学生と対話したが、一切妥協せずに「鉄の女」と呼ばれた。運動は頓挫し、若者らに広がった失望感は、その後「香港独立」を視野に入れる「本土派」の台頭を招き、社会の亀裂を深めた。
世論調査での支持率では曽氏が林鄭氏をリードし、最終盤にはその差は倍近くまで広がった。民主派は林鄭氏当選阻止を狙って曽氏への投票を決めた。曽氏は「幅広い民意に応えられるのは自分だ」と支持を訴えたが、及ばなかった。世論の支持率には中国を後ろ盾とする林鄭氏への反発がにじみ、投票結果と住民意識の隔たりが鮮明になった。
曽氏を支持した民主派だが、1人1票の普通選挙を求めており、一部委員は白票を投じたと述べた。当選発表後、開票会場内では親中派の委員から歓声がわく一方、民主派とみられる一部委員らが雨傘運動のシンボルになった黄色の傘を差し、林鄭氏らの前を行進して抗議の姿勢を示した。会場周辺では民主派グループ「民間人権陣線」の区諾軒代表(29)が「小さなサークル内の選挙にすぎない。真の民意を示すためには、普通選挙が必要だ」と訴えた。
中国による政治的な締め付けなどで香港の街には以前の活気はない。住宅価格の高騰や貧富の格差拡大で庶民の暮らしも苦しくなった。ソーシャルワーカーの姚冬梅さん(23)は「庶民は狭小住宅しか借りられない。自分も結婚して子供が生まれたらどうなるだろうか。(長官選は)市民生活に直結するのに投票できず、将来に希望が見いだせない」と不満を募らせた。当選した林鄭氏は「私が最初に行う仕事は亀裂を修復し、団結して前に向かっていくことだ」と強調した。【香港・鈴木玲子】
中国政府の香港マカオ事務弁公室は「林鄭氏は、中央政府が行政長官に求める条件に符合する」などと歓迎するコメントを発表した。林鄭氏を通して香港の安定を維持し、中国離れや独立世論を封じ込めていく方針とみられる。
習近平指導部は今秋、5年に1度の党大会を迎える。7月は香港返還20年の節目でもあり、「1国2制度」の成功を内外に示す必要がある。反中感情が高まる香港の選挙で大きな混乱や予想外の結果が出ることを警戒してきた。
習指導部が投開票日の2カ月近く前にメディアを通じて意中の候補を明確にしたのも、盤石の態勢を敷くためとみられる。2月6日には香港紙が、中国全国人民代表大会(全人代=国会)の張徳江・常務委員長(議長、中国共産党序列3位)が香港に隣接する広東省深セン市を訪問し、林鄭氏への支持を香港側に伝えたと報じた。5年前の前回選挙では、終盤まで中国政府が意中の候補者を明確にしなかったため、親中派の候補者同士が泥沼の争いを演じる一因となった。
今回、中国政府は香港世論に直接働きかける動きをみせた。李克強首相は5日の全人代開幕日の政府活動報告で「香港独立に前途はない」と初めて香港独立の動きに言及し、強く警告した。全人代期間中、香港問題の担当閣僚から選挙介入を正当化するかのような発言も飛び出した。
一方、中国政府は香港を懐柔する「あめ」も忘れていない。投票直前の23日には、中国主導の国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)が新たに香港を含む13カ国・地域の加盟申請を承認したと発表した。一部香港紙は「国際金融センターの地位を強固に」などと報じ、中国がもたらす経済的利益を強調した。
選挙結果だけ見れば、圧倒的な政治力、経済力によって香港の反中世論を抑え込む中国の思惑は奏功したかにみえる。だが、こうした力頼みの中国の手法は「1国2制度」の空洞化を招き、中長期的には香港の活力が失われるとの指摘も出ている。【北京・河津啓介】
【略歴】林鄭月娥(りんてい・げつが、英語名・キャリー・ラム)氏 1957年5月、香港生まれ。80年に香港大卒業後、香港政庁に入庁。英ケンブリッジ大学で学ぶ。2000年に社会福利署長に就任。04年に駐英香港経済貿易代表部代表、07年に発展局長を歴任。12年から政務官。中国の任命を経て7月1日、行政長官に就任する。

Similarity rank: 4.2
Sentiment rank: -0.4
TW posts: 5
TW reposts: 0
TW likes: 0
TW sentiment: 10