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アングル:鉄鋼・アルミ輸入制限、米製造業にコスト増の悪影響

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[デトロイト 2日 ロイター] – トランプ米政権が鉄鋼とアルミニウムの 輸入制限に踏み切り、 鉄鋼に25%、 アルミに10%の 関税を課せば、 米国内の 製造業は自動車やトラクターから缶スープまで幅広いメーカーがコスト増で減益に見舞われるか、 それを避けるために値上げして
[デトロイト 2日 ロイター] – トランプ米政権が鉄鋼とアルミニウムの輸入制限に踏み切り、鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を課せば、米国内の製造業は自動車やトラクターから缶スープまで幅広いメーカーがコスト増で減益に見舞われるか、それを避けるために値上げして消費者に負担転嫁を余儀なくされかねない。
輸入制限措置の詳細は不明だが、アナリストの間では高関税導入は製造業にとって打撃との見方が一般的。鉄鋼は輸入品の値上がりで国内メーカーの価格決定力が高まり、大半を輸入に頼るアルミもコストが上昇する見通しだ。
バギーなどを製造するポラリス・インダストリーズ のスコット・ワイン最高経営責任者(CEO)は、輸入関税導入によるコスト上昇は1%程度であり、当面は「対応可能」としている。
ロス商務長官も2日のCNBCテレビで、自動車に使われている鉄鋼は1台当たり1トンだが、鉄鋼は1トン当たり700ドルで、輸入制限による価格への影響は小さいとの見方を示した。
しかし関税導入が自動車メーカーのコストに及ぼす影響は実際にはもっと複雑だ。
鉄鋼は関税導入を見越して既に今年に入って100ドル上昇した。
また調査会社ダッカ―・ワールドワイド・FSGによると、米国製自動車の平均車重は3835ポンド(1.9トン)で、このうちアルミは11%(422ポンド)、鉄鋼は54%(2071ポンド、約1トン)。ただ、部品製造の際にくずが発生するため、実際に平均的な自動車1台当に必要なアルミは526ポンド、鉄鋼は2925ポンドだ。
自動車メーカーは普通の鉄鋼やアルミよりも価格の高い高強度合金を使っているという面もある。
コンサルタント会社LMCオートモーティブの予測部門の責任者、ジェフ・シャスター氏は、自動車メーカーは既に販売の落ち込みに苦しんでおり、輸入制限の導入で利幅の圧縮か販売減の二者択一を迫られるとみている。
バッキンガム・リサーチ・グループのアナリストのジョゼフ・アマチュロ氏は、輸入関税導入による自動車1台当たりのコスト増を300ドルと試算。フォード・モーター とゼネラル・モーターズ(GM) の米自動車大手2社はいずれも減益に追い込まれる恐れがあると指摘した。
重機メーカーのキャタピラー や農業機械のディア は製品の原材料に占める鉄鋼の比率が高い。 JPモルガンは関税導入で両社の2019年の1株利益が6%と9%それぞれ落ち込みそうだとみている。
食品分野も逆風にさらされてもおかしくない。エドワード・ジョーンズのアナリスト、ブリタニー・ワイズマン氏によると、アルミへの関税導入でビールメーカーは容器のコストが上昇する。モルソン・クアーズ・ブリューイング は米国が主力市場で、大きな影響を受けそうだ。ワイズマン氏によると、缶の製造で錫メッキの鉄鋼を使っているキャンベル・スープ にもマイナスになるだろう。
IHSマークイットのジョン・マザーソール調査部長は、輸入関税の影響を含めると今年のアルミ価格の上昇は6.7%に達すると予測した。一方で「この値上がりが最終消費者にどの程度転嫁されるか明言するのは難しい」と話した。
株式ストラテジストの意見では、米企業業績全体として見れば、鉄鋼とアルミへの輸入関税導入が大きな痛手になる公算は乏しい。実際にトランプ氏が輸入制限の方針を公表しても、企業業績見通しに大きな修正は起きていない。
それでも投資家は、トランプ氏の政策をきっかけに他国が報復に動くなど貿易戦争が起きれば、業績見通しを見直すことになると懸念している。
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのシニア・グローバル・エクイティ・ストラテジスト、スコット・ウレン氏は「輸入制限が実施されればそれなりの影響はあるものの、世界が終るということはない。(ただし)貿易紛争に発展すれば話は変わってくる」と警告した。
(Nick Carey記者)

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