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捜索効率化かプライバシーか 不明者名公表、悩む自治体

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西日本豪雨で行方不明者の 捜索が続くなか、 岡山県が不明者の 氏名の 公表に踏み切った。 生存情報が次々と寄せられ、 半日で25人の 生存が確認された。 ただ、 個人情報保護の 観点から公表を見送る自治体もある。 捜索の …
西日本豪雨で行方不明者の捜索が続くなか、岡山県が不明者の氏名の公表に踏み切った。生存情報が次々と寄せられ、半日で25人の生存が確認された。ただ、個人情報保護の観点から公表を見送る自治体もある。捜索の効率化か、プライバシー保護か。対応は定まっていない。
「個人情報保護法のしばりがある中、リスクをとってやったことは、捜索のリソース(資源)の有効活用という点で良い決断だったのではないか」
12日に岡山県庁で開かれた災害対策本部会議。伊原木隆太知事は、11日からホームページで行方不明者の氏名と住所の一部の公表に踏み切ったことについて、こう述べた。
被害が明らかになり始めた7日以降、岡山県は家族の承諾を得られた新見市と鏡野(かがみの)町の2人の不明者の氏名を公表したが、大規模に冠水した岡山県倉敷市真備(まび)町については不明者情報が精査されていないなどとして、公表を控えてきた。
11日までに真備町の水が引くにつれて、不明者情報の詳細を把握。11日午前、安倍晋三首相の被災地視察に同行中の伊原木知事が、「災対会議で意思決定するのを待つまでもなく、公表すればいい」との方針を災害対策本部に伝え、氏名の公表にかじを切った。
県によると、11日午後2時の時点の不明者は43人だったが、公表後に生存情報が次々と寄せられ、25人の生存を確認、11日午後8時時点の不明者は18人になった。家族から非公表を望む声が寄せられた1人については公表を取りやめ、「非公表」と表記した。
ただ、自治体によって対応は割れている。
広島県は市町と協議した上で氏名の公表を検討することにしている。湯崎英彦知事は12日、「個々の状況を見ながら決めていくことになる」と述べた。
広島市で77人が死亡した2014年8月の土砂災害の際は、当初は不明者の氏名を非公表にしていたが、県と市が協議して、発生から5日後に公表した。
今回、広島市は12日朝の時点で16人の安否不明者の氏名を公表していない。広島県の担当者は「今後、捜索が思ったように進まなければ各市町との協議を検討したい」と話す。
同じ広島県でも、東広島市は当初からカタカナ表記で不明者の氏名を公表している。38人が安否不明だったが、12日午後6時までに25人の生存が確認され、不明者は1人だ。担当者は「公表することで親類、知人にも伝えられ、新たな情報が期待できる」と話す。
愛媛県は行方不明者2人の氏名を公表していない。担当者によると、個人情報保護と公開の公益性を比較して判断した結果、家族の同意を得ない公表は控えているという。中村時広知事は12日、記者団に「個人情報保護の問題もある。慎重に進めたい」と述べた。
05年に全面施行された個人情報保護法は、本人の同意なく情報を第三者に提供することを禁じているが、「生命、身体または財産の保護のために必要がある場合」は例外とする条項を盛り込んでいる。総務省によると、全国の市区町村のうち、こうした例外条項を個人情報保護条例に設けているのは96%に上る。
だが、行方不明者や死者の氏名公表については自治体に判断が委ねられ、過去の災害でも対応は分かれてきた。
15年に鬼怒川が決壊した茨城県常総市。市は、安否不明者15人について氏名を公表しなかった。条例には緊急時に情報を公表できる条項があったが、プライバシー保護を優先させたという。市は発生から5日後、不明者15人全員の所在が確認できたと発表。公表していれば本人や周辺から情報が寄せられた可能性も指摘された。市の担当者は「DV被害で逃げている人がいた可能性もあり、氏名の公表は今も悩ましい」と振り返る。
13年の土石流災害で36人が死亡した東京都大島町(伊豆大島)。町は発生から半日後、家族の同意を待たずに行方不明者の氏名を役場に張りだし、名前が書かれた男性が名乗り出た。担当者は「早期発見につながり、その分、捜索や救助に人手を割けた」と話す。
自治体の判断が割れるなか、国はルールづくりに消極的な姿勢を見せる。
「都道府県、市町村、警察の間で協議をし、対応を定めてもらう」。4月の参院災害対策特別委員会。災害犠牲者の氏名公表について、「国が何らかのガイドラインを設けるべきではないか」との質問を受けた小此木八郎・防災担当相はそう答弁した。
今年1月にあった草津白根山噴火では、陸上自衛隊員が死亡。防衛省は当初、「家族の同意が得られていない」として氏名を公表しなかった。質問はこの点について触れたものだった。内閣府はいまも「各自治体が個人情報保護条例などを踏まえて判断する」との見解を崩していない。
個人情報保護条例は各自治体で制定されているが、同じような条項でもそれぞれ解釈が異なり、氏名公表にばらつきが出ている。メディアへの発表基準もなく、住民からのクレームをおそれて萎縮している自治体も多い。
氏名を公表すれば生存確認の連絡が入る契機になり、救助や捜索の円滑化にもつながる。大規模災害では何よりも人命救助が優先されるべきで、住民の方々は甘受してほしい。南海トラフ地震などに備え、国が公表に関する全国統一の基準をつくるべきだろう。

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