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緒方洪庵が結んだ縁 豪雨被災の酒造と阪大、酒蔵を文化拠点に 愛媛

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時を超えて洪庵先生が結んでくれた絆を大切にしたい――。江戸時代の蘭方医・緒方洪庵(1810~63)が開いた適塾をルーツとする大阪大の教授が、2018年の西日本豪雨で被災した老舗「緒方酒造」(愛媛県西予市)に災害ボランティアとして足を運んだことを縁に、阪大と緒方酒造の“復興物語”が進んでいる。緒方酒造の銘酒「緒方洪庵」の存在に驚いた阪大の調べで、両家の先祖が同じと判明。阪大は、被災で265年の歴史に幕を閉じた酒蔵を文化拠点としたほか、豪雨で途絶えた銘酒「緒方洪庵」を新たな日本酒として復活させた。 …
時を超えて洪庵先生が結んでくれた絆を大切にしたい――。江戸時代の蘭方医・緒方洪庵(1810~63)が開いた適塾をルーツとする大阪大の教授が、 の西日本豪雨で被災した老舗「緒方酒造」(愛媛県西予市)に災害ボランティアとして足を運んだことを縁に、阪大と緒方酒造の“復興物語”が進んでいる。緒方酒造の銘酒「緒方洪庵」の存在に驚いた阪大の調べで、両家の先祖が同じと判明。阪大は、被災で265年の歴史に幕を閉じた酒蔵を文化拠点としたほか、豪雨で途絶えた銘酒「緒方洪庵」を新たな日本酒として復活させた。
「災害がなければ緒方酒蔵との出会いはなかったかもしれない」。文化拠点「緒方らぼ」として20年に再出発を果たした緒方酒造の酒蔵跡で 中旬に出迎えてくれた阪大大学院人間科学研究科の佐藤功教授は、当時を振り返った。豪雨直前の にくしくも阪大教授となっていた。
18年 朝、豪雨による野村ダムの緊急放流により肱川(ひじかわ)が氾濫し、野村町地区では5人の犠牲者が出た。肱川から約40メートルの緒方酒造も焼酎蔵ではタンクが屋根を突き破り、ほぼ全壊に。一段高い場所にあった酒蔵も約1・2メートルの高さまで浸水してタンクの電気系統が全て故障、廃業に追い込まれた。社長だった緒方レンさん(87)は当時、隣接する自宅におり、「庭の池の水かさが増えたかと思ったら、あっという間に1階に水が入ってきた。2階に逃げ込んだものの、一時、身動きが取れなくなり恐ろしかった」と振り返る。
佐藤教授が、災害ボランティアとして現地・野村に入ったのは約2カ月後。妻の実家、西予市城川町の隣町だったからだ。ボランティアを受け付ける社会福祉協議会の隣にある緒方酒造が目に留まった。「何かの縁を感じる……」。緒方さんと交流を深めるようになり、日本酒「緒方洪庵」づくりが危ぶまれていることを知った。緒方家に伝わる家系図で洪庵と同じルーツであるとされたことから、洪庵の生誕180年を記念して 、醸造を始めた酒だった。
「酒蔵や『緒方洪庵』をなんとか存続させたい」と佐藤教授は仲間の阪大教授らを募り、復興に向けた“物語”が幕を開けた。阪大所蔵の家系図から、洪庵と緒方家はいずれも豊後国(大分県)の豪族・佐伯家一族の流れをくんでいることが裏付けられた。だが、緒方さんは高齢を理由に長年の歴史に幕を閉じることを固く決意していた。その代わりに「長年お世話になった野村への恩返しとして、アカデミックな施設として残すことを考えてほしい」と告げた。銘酒「緒方洪庵」の復活が困難と考えた緒方酒造は「洪庵ゆかりの阪大であれば」と商標を託すことも決めた。
一方、地元住民による緒方酒造への思いも強かった。「緒方酒造は地元の歴史文化、経済、政治の背景のシンボル。文化拠点として守っていきたい」。西日本豪雨を契機に地元・野村地域自治振興協議会、愛媛大、阪大の3者により21年に設立されたまちづくり団体「NEOのむら」の代表理事で西予市職員の清家卓さん(44)は熱く語る。
緒方酒造は江戸時代の 創業。元々地元の有力な庄屋で、地元発展に尽くした。宇和島藩に掛け合って、被差別部落の住民の救済に貢献。明治以降は、旧野村町の初代町長を務め、国鉄誘致、発電所開設に関わる他、地場産業として養蚕を根付かせたり、インフラ整備に尽力したりして、近代化に導いた。170年の伝統を誇る「乙亥(おとい)大相撲」も、 にあった大火災を鎮めることを願って緒方家が始めたと伝わる。全国で唯一プロとアマの取組がみられ、大鵬や白鵬など歴代の横綱も参加した相撲大会だ。
地元住民だけでなく、阪大や愛媛大の有志らの支援もあって、酒蔵は文化拠点「緒方らぼ」として、再出発した。さらに復興支援のシンボルとしての酒造りや酒蔵の文化拠点に整備するため、NEOのむらは から約2カ月間、クラウドファンディング(CF)をした。 間で目標額100万円を突破し、最終的には312万円が集まった。多くのボランティアによって整備され、瓶詰め用の機器やタンク、こうじ室が残る拠点となった。災害ボランティアに訪れた大阪の落語家・笑福亭笑利さんが新作落語「緒方洪庵」をつくるなど、新たな“絆づくり”の場にもなっている。落語は 末に緒方らぼで披露された。
「私の代でのれんを下ろすのは本当に申し訳ない。だけど野村の方々と大阪大、全国からのボランティアの交流場となり、先祖も喜んでくれていると思う。洪庵先生が結んでくれた縁でしょうか」。緒方さんは目を細める。 NEOのむらに参加する佐藤教授も「緒方酒造の酒蔵は、復興のシンボルとして生き残る。講演、落語、コンサート。どのように発展していくかが楽しみ」と語る。 NEOのむらは、南予の方言で「すごい」を意味する「がいな」をもじった交流イベント「がいなんよ大学」を緒方らぼで昨年から開講。 IT人材育成、高校生によるまちづくり、防災をテーマに8、9、 にも開く予定。問い合わせはNEOのむら(メールnomuraneo@gmail.

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