Start Japan Japan — in Japanese コラム:マクロン氏勝利、仏大統領制の土台揺るがすリスクも

コラム:マクロン氏勝利、仏大統領制の土台揺るがすリスクも

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Swaha Pattanaik[香港 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] – フランス大統領選決選投票は、 中道系候補の エマニュエル・ マクロン氏が、 自身の 才能と同じぐらい大きな幸運に後押しされる形で勝利を手にした。 もしマクロン氏が、 極右の 国民戦線の マリーヌ・ ルペン候補を打ち破ったという以上
Swaha Pattanaik [香港 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] – フランス大統領選決選投票は、中道系候補のエマニュエル・マクロン氏が、自身の才能と同じぐらい大きな幸運に後押しされる形で勝利を手にした。もしマクロン氏が、極右の国民戦線のマリーヌ・ルペン候補を打ち破ったという以上の称賛を得たいなら、今後も絶対に才腕と運の両方が必要になる。万事がうまくいったとしても、同氏は限定的な改革をやり遂げるのが関の山だろう。逆に最悪の場合、フランス第5共和政を支えてきた大統領制の土台を揺るがしかねない。 マクロン氏の得票率は約3分の2に達し、同氏が設立してまだ1年余りにしかならない市民運動「前進」にとっては、目を見張るほどの政治的な成功だった。親欧州連合(EU)路線を強く掲げた彼らの勝利は、EUに懐疑的なポピュリズム(大衆迎合主義)勢力に対する有権者の拒絶反応と言える。だがマクロン氏は、既成政党への幻滅が広がっている状況もうまく利用することができた。 左右両派の主要政党は、6月の国民議会(下院)選挙に向けて党勢の立て直しを目指すだろう。これに対してマクロン氏の市民運動も候補者を擁立するとみられるが、今回の大統領選ほどの大勝にはならないかもしれない。そこでマクロン氏にはいくつかの選択肢が残される。 1つは議会選挙で最大議席を獲得した政治勢力と連携して自身の政策を実行していく道だ。恐らく第1党は中道右派の共和党になる。もう1つは、共和党と左派の社会党の中にいる改革志向のグループと連立を組み、合意可能な少ない政策を完遂するやり方。これらの政策には労働関連税の負担軽減や一部の歳出削減、公共投資拡大などが含まれるだろう。 ただいずれにしても、そうなるとマクロン氏は、有権者がノーを突きつけた既成政党に首の根をつかまれる恐れがあるように見える。また超党派の連携は、中道路線をアピールしているマクロン氏にぴったりかもしれないが、すぐに政争に発展することもあり得る。連立協定調印に至る細心の注意を要する交渉が、あっという間に閣僚ポジションや政策を巡る泥仕合に転じてもおかしくない。 こうした事態になれば、有権者の大統領観に決定的な打撃を及ぼしてしまう恐れがある。フランス大統領の権威はシャルル・ドゴールが確立し、フランソワ・ミッテランがそれを強化した。前職のフランソワ・オランド氏、前々職のニコラス・サルコジ氏の下で権威は弱まったが、2人ともマクロン氏がこれから直面するかもしれない国民に対する「大統領職の安売り」とは無縁でいられた。 第1回投票で20%近くの得票を記録した急進左派のジャンリュク・メランション氏は、憲法を修正して大統領権限を縮小し、議会の影響力を高めるべきだと主張していた。マクロン氏の当選は、最終的にそうした方向への変化をもたらすリスクをはらんでいる。 [香港 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] – フランス大統領選決選投票は、中道系候補のエマニュエル・マクロン氏が、自身の才能と同じぐらい大きな幸運に後押しされる形で勝利を手にした。もしマクロン氏が、極右の国民戦線のマリーヌ・ルペン候補を打ち破ったという以上の称賛を得たいなら、今後も絶対に才腕と運の両方が必要になる。万事がうまくいったとしても、同氏は限定的な改革をやり遂げるのが関の山だろう。逆に最悪の場合、フランス第5共和政を支えてきた大統領制の土台を揺るがしかねない。 マクロン氏の得票率は約3分の2に達し、同氏が設立してまだ1年余りにしかならない市民運動「前進」にとっては、目を見張るほどの政治的な成功だった。親欧州連合(EU)路線を強く掲げた彼らの勝利は、EUに懐疑的なポピュリズム(大衆迎合主義)勢力に対する有権者の拒絶反応と言える。だがマクロン氏は、既成政党への幻滅が広がっている状況もうまく利用することができた。 左右両派の主要政党は、6月の国民議会(下院)選挙に向けて党勢の立て直しを目指すだろう。これに対してマクロン氏の市民運動も候補者を擁立するとみられるが、今回の大統領選ほどの大勝にはならないかもしれない。そこでマクロン氏にはいくつかの選択肢が残される。 1つは議会選挙で最大議席を獲得した政治勢力と連携して自身の政策を実行していく道だ。恐らく第1党は中道右派の共和党になる。もう1つは、共和党と左派の社会党の中にいる改革志向のグループと連立を組み、合意可能な少ない政策を完遂するやり方。これらの政策には労働関連税の負担軽減や一部の歳出削減、公共投資拡大などが含まれるだろう。 ただいずれにしても、そうなるとマクロン氏は、有権者がノーを突きつけた既成政党に首の根をつかまれる恐れがあるように見える。また超党派の連携は、中道路線をアピールしているマクロン氏にぴったりかもしれないが、すぐに政争に発展することもあり得る。連立協定調印に至る細心の注意を要する交渉が、あっという間に閣僚ポジションや政策を巡る泥仕合に転じてもおかしくない。 こうした事態になれば、有権者の大統領観に決定的な打撃を及ぼしてしまう恐れがある。フランス大統領の権威はシャルル・ドゴールが確立し、フランソワ・ミッテランがそれを強化した。前職のフランソワ・オランド氏、前々職のニコラス・サルコジ氏の下で権威は弱まったが、2人ともマクロン氏がこれから直面するかもしれない国民に対する「大統領職の安売り」とは無縁でいられた。 第1回投票で20%近くの得票を記録した急進左派のジャンリュク・メランション氏は、憲法を修正して大統領権限を縮小し、議会の影響力を高めるべきだと主張していた。マクロン氏の当選は、最終的にそうした方向への変化をもたらすリスクをはらんでいる。

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