Start Japan Japan — in Japanese 高校球児「ドラ1確実」の評価は信じていいか – 赤坂英一 (スポーツライター)

高校球児「ドラ1確実」の評価は信じていいか – 赤坂英一 (スポーツライター)

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現在、 阪神甲子園球場で開催中の 高校野球選手権、 今回は第100回記念大会とあってか、 マスコミの 報道も例年以上に情報量が多い。 テレビ、 活字、 ネットと毎日の ように「金の 卵」 や「ドラフト1位候補」 という見出しが踊っている。 しかし、 現時点での この 評価、 どこまで信頼するに
現在、阪神甲子園球場で開催中の高校野球選手権、今回は第100回記念大会とあってか、マスコミの報道も例年以上に情報量が多い。テレビ、活字、ネットと毎日のように「金の卵」や「ドラフト1位候補」という見出しが踊っている。しかし、現時点でのこの評価、どこまで信頼するに足るものなのか。
好選手がそろっていることは確かである。手前味噌ながら、私が拙著 『野球エリート/野球選手の人生は13歳で決まる』(講談社+α新書) で取り上げた選手たちも活躍中だ。根尾昂(内野手兼投手・大阪桐蔭3年)は、持ち前のセンスに加え、身体の厚みが増し、一層逞しくなってきた。 稲生賢二(外野手・愛工大名電2年)も持ち前の勝負強さに磨きがかかっている。愛知県大会では親友・石川昂弥を擁する東邦と決勝で激突、先制タイムリーに2本塁打を放ち、自身初の甲子園出場を果たした。
大会が幕を開けてからは、秋田からやってきた吉田輝星(金足農3年)の力投ぶりが目を引く。1回戦の鹿児島実戦では9回を完投して9安打1失点。球数が157球と多かったのが気になるが、高校球界でも球が飛ぶようになったこの時代に14奪三振をマークしている。 身長176㎝と今時の高校球児としては小柄ながら、秋田県大会では最高速度150㎞をマーク。加えて、変化球のキレ、コントロール、フィールディングも優れており、早くも「PL学園時代の桑田真澄を彷彿とさせる」とマスコミではもっぱらだ。
根尾の向こうを張るもうひとりの二刀流、エース兼4番、野村佑希(花咲徳栄3年)の評価も高い。1回戦の鳴門戦は、投手としては5失点と打ち込まれたものの、打者としては高校通算57号のソロ本塁打を含む2安打3打点。ネット裏に陣取ったプロのスカウトの間でも、「インコースのさばき方がうまい」「将来の右の大砲候補」と賞賛の声が相次いでいる。
今大会はほかにも、投手で山田龍聖(高岡商業3年)、渡邉勇太朗(浦和学院3年)、及川雅貴(横浜2年)、野手で林晃汰(智弁和歌山3年)、大谷拓海(中央学院3年)が今秋のドラフト候補とされている。が、彼らが全員上位で指名され、来年からすぐにプロでも活躍できるようになるかといえば、話は別だ。
昨年の甲子園は長距離打者の〝当たり年〟と言われ、高校通算最高記録と言われる111本塁打を放った〝怪物〟清宮幸太郎(早実→日本ハム)をはじめ、昨夏の第99回大会で1大会6本塁打の新記録を達成した中村奨成(広陵→広島)、清宮のライバルと言われた〝西の大砲〟安田尚憲(履正社→ロッテ)らがドラフト1位でプロ入りした。しかし、彼らが全員、いまだ二軍で修行中であることは、野球ファンならよくご存じの通り。
前年2016年秋のドラフトでは、スポーツ紙が〝高校ビッグ3〟と名付けた寺島成輝(履正社→ヤクルト)、藤平尚真(横浜→楽天)が1位指名、高橋昂也(花咲徳栄→広島)が2位指名でプロ入りするも、こちらも一軍に定着するまでには至っていない。 同年夏の第98回大会で優勝投手となった今井達也(作新学院→西武)も、6月にプロ初登板初先発で初勝利を挙げ、先発ローテーションの一角を担いながら、プロの壁にぶち当たってもがいている。
さらに15年秋のドラフトに遡ると、この年はオコエ瑠偉(関東第一→楽天)、平沢大河(仙台育英→ロッテ)、高橋純平(県岐阜商→ソフトバンク)らが1位指名を受けながら、3年目の今年まで伸び悩んだままだ。ほんの一握りしか成功できない世界とはいえ、このようにプロ入り後の成績を見ていると、最近の甲子園のスターはレベルが下がっているのかと勘繰りたくもなる。 野球人口の減少
そうした現象の背景には、最近の野球人口の減少が影響しているようだ。日本高野連が6月に発表した全国の野球部員数を見ると、硬式の部員数は昨年17年より8389人少ない15万3184人で、4年連続の減少となった。 しかも、調査を開始した1982年以降、最大の減少数である。16万人台を割ったのは03年以来15年ぶりで、1年生部員に至っては平成年間に入って最も少ない5万413人だった。
この現象には、全国で多くの野球部指導者たちが危機感を募らせている。朝日新聞6月29日付の記事によれば、岩手県内では今年の秋に3年生が引退すると、部員数が9人未満になる学校が3分の1近くを占める見込みだという。第100回大会の裏側で進むそうした深刻な事態を踏まえて、あるセ・リーグ球団のスカウトはこう指摘する。
「高校野球の選手層が薄くなれば、当然競技としての野球のレベルも下がる。そんな低いレベルで打った、抑えたと言っても、プロのレベルとは最初から大きな開きがあるわけだ。確かに、最近の球児は昔より体格がよくなったし、パワーもついた。投手なら150㎞投げられるとか、打者なら本塁打を何十本も打つとか、そういう子も毎年出てくる。でも、プロで勝負できる本当の力を持っているかとなると、そうは言えない。それが野球というスポーツの難しさでもあります」
第100回大会の盛り上がりが、野球人口の増加につながればいいのだが。

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