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SDGsと企業 国谷裕子さんが有馬利男さんに聞く

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SDGsはSustainable Development Goalsの 略。 朝日新聞社はSDGsが示す課題の 解決策を探ります。 企業が生産段階から環境や人権に配慮した仕組みをつくり、 収益につなげるの もそ…
SDGsはSustainable Development Goalsの略。朝日新聞社はSDGsが示す課題の解決策を探ります。企業が生産段階から環境や人権に配慮した仕組みをつくり、収益につなげるのもその一つです。キャスターの国谷裕子さんが今回は、国連と企業の協力活動の中心にいる有馬利男さんに聞きました。
国谷 SDGsは企業にとって「宝の山」と、よく聞きます。
有馬 世界共通の課題に答えやサービスを探ることで、ビジネスが生まれます。ブランド力や企業イメージの向上にもつながる。さらに自分たちはこういう価値のために働いているのだと、社内で気持ちのまとまりが生まれます。
国谷 これまで言われてきたCSR(企業の社会的責任)と、SDGsはどう違うのでしょうか。
有馬 社会貢献活動をCSRだと考える企業も多いのですが、本来求められているのは、社会課題の解決に責任を果たすことです。SDGsはその果たすべきターゲットといえます。
国谷 企業が動くことによって社会を変革する。しかし、企業自体も、変わらなくてはいけませんね。
有馬 価値を創出して収益につなげていくビジネスモデル、競争力をつけるための技術力や生産能力、どちらも変えていく必要があります。そうした時に、SDGsが示す17の課題が、とても参考になるのです。
国谷 先駆的な欧米企業の共通点は何でしょうか。
有馬 人権意識の高さや中長期的な視点、経営者の信念です。日本では四半期の結果を出さなくてはダメだということで、少し時間のかかる投資はしづらい。
国谷 日本企業の方が長期的展望を持っていたと思うのですが、今は、近視眼的なのでしょうか。
有馬 そうだと思いますね。けれども、SDGsに背中を押されて変わってきています。投資家も、社会課題への取り組みを判断材料に加え始めています。
国谷 二酸化炭素の排出量で評価する動きもあります。社会課題への戦略がないと、資金を集めにくくなるということですか。
有馬 資金が集まらないだけでなく、原材料や部品などの調達において、いいパートナーを見つけられなくなると思いますね。
国谷 企業の取り組みにSDGsを浸透させていくときに、一番の大きな壁は何でしょうか。
有馬 「いいことだからやろう」と株主や社内を説得するのは簡単ではありません。経営者自身が腹で納得して動かないと、進みようがない。結局は経営者の能力と心の問題だと思います。
国谷 グローバルにつながっていないと思っている中小企業の背中を、どう押すことができますか。
有馬 気候変動をはじめ、社会基盤が崩れかねないという点でつながりを考えてもらうことです。それに、中小企業の経営者には、世の中の役に立つのだという熱い思いを持っている方がたくさんいます。
国谷 政府の実施指針にはSDGsを企業の本業に取り込むと書かれていますが、そう簡単ではないというのが、企業の本音では。
有馬 ほめる仕掛けが必要です。先行することの「利」もあるわけですから。企業が世界のあり方にかかわる時代になったのです。経営者が勇気と信念をもって向かうことができるか。新たなグローバルな競争が始まっています。(構成=北郷美由紀、写真=時津剛)

有馬利男(ありま・としお) 241社・団体が参加するグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン代表理事。元富士ゼロックス社長。

国谷裕子(くにや・ひろこ) 1993~2016年、NHK総合「クローズアップ現代」を担当。近著に「キャスターという仕事」(岩波新書)。

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