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アングル:ソフトバンク、逆風下での上場承認 利益・投資のバランス難しく

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[東京 12日 ロイター] – ソフトバンクグループ(SBG) の 通信子会社ソフトバンク(SB)の 新規株式上場(IPO)が承認された。 12月19日に東証に上場する。 SBGの
[東京 12日 ロイター] – ソフトバンクグループ(SBG) の通信子会社ソフトバンク(SB)の新規株式上場(IPO)が承認された。12月19日に東証に上場する。 SBGの孫正義社長は5日の記者会見で「高配当を打ち出していきたい」と語ったが、国内通信の競争環境が厳しくなる中で、成長に向けた投資も怠れない。市場の圧力にさらされる中で、利益と投資、配当のバランスはこれまで以上に難しくなりそうだ。
<一歩も引かない政府>
SBの宮内謙社長は5日のSBG決算会見後、全社員に向けて一通のメールを送った。この日発表された通信事業に携わる人員を2─3年かけて4割削減する方針について、あらためて理解を求めるためだ。メールの内容はこれまでの成長戦略を説明するにとどまったが、社員の間には将来に対する不安も広がっている。
国内通信事業の4─9月期の営業利益は前年比9%増の4469億円に拡大した。2018年3月期は先行投資がかさみ、前年比5%減の6830億円に落ち込んだが、今期は反転増益を見込んでいる。
だが増益計画とは裏腹に、国内携帯電話市場を取り巻く環境は厳しさを増している。菅義偉官房長官が「携帯電話料金は4割程度下げる余地がある」と繰り返し発言、携帯電話会社にプレッシャーをかけているためだ。各社とも決算会見で、これまでの値下げ実績やこれからの値下げ方針について政府を意識した説明を追加するなど、対応に追われた。
「1ギガバイトあたりの単価は世界で最も安いレベルだ」。孫社長は5日の会見で胸を張ったが、ある政府関係者は「来年の統一地方選や参院選、10月の消費増税を控え、菅官房長官は一歩も引かないだろう」との見方を示している。
内閣府が7日公表した9月の景気動向指数は、基調判断が「足踏みを示している」と、従来の「改善を示している」から3年4カ月ぶりに下方修正された。選挙や消費増税を前にして、景気の失速は許されず、巨額の利益を上げている携帯電話会社に矛先は向かいやすい。
東海東京調査センター投資調査部シニアストラテジスト、中村貴司氏は「政府が強い意向をもっており、携帯電話料金の引き下げは続くだろう。国内市場は成熟しているので成長性は厳しい。楽天 も入ってくれば競争も増す」と指摘。「トップラインが伸びない中、コスト引き下げ競争となることが見込まれ、先き行きは楽観的に見られない」と語った。
<上場で柔軟な対応困難も>
NTTドコモ は10月31日、現行の料金プランを見直し、2019年4─6月期に2─4割程度の値下げを行うと発表した。1年当たり最大4000億円規模の顧客還元を実施する方針で、同社は来期、5年ぶりの営業減益となる見通しだ。ドコモの減益覚悟の値下げは、他の2社にとってプレッシャーになるのは間違いない。
ソフトバンクはこれまで、利益創出については比較的柔軟に対応してきた。前期に減益となったのも、顧客基盤拡大に向けた投資を優先させたためだ。ある幹部は「成長のために投資が必要という局面では、損益はキャッシュよりも柔軟に考えている」とスタンスを説明していた。しかし、上場すれば株主の手前、柔軟な対応もとりにくくなる。
ソフトバンクが5日、通信事業に携わる人員を4割削減し、成長事業に振り向ける方針を打ち出したのは、値下げをしても、利益を出せる体質づくりを進めるためだ。「低価格のいろいろなサービスをやっていくためには、業務の効率を良くしていかなければいけない」。孫社長は、配置転換の背景に政府の値下げ圧力があったことを素直に認めた。
アイザワ証券市場情報部アナリスト、阿部哲太郎氏は、人員削減に加え、人工知能(AI)や定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用してコストを引き下げる予定であることを指摘し、「目先は大きな減益になることはないのではないか」との見方を示した。
ソフトバンクの証券コード「9434」。かつての固定電話会社「日本テレコム」がつけていた証券コードだ。日本テレコムは親会社が変わる中で2005年に上場廃止となり、その後ソフトバンク傘下に入った。今回、固定電話から携帯電話を中心とする会社に姿を変え13年ぶりの復活となる。この番号でまた新たな会社に生まれ変われるのか。
「低価格になるから減益にしても良いというのは、ゼロから創業したソフトバンクとしては絶対に言い訳として使いたくない」。孫社長は語気を強めたが、長い目で見た利益を確保するために、痛みを伴う厳しい判断を求められる場面も出てきそうだ。
(志田義寧 取材協力:杉山健太郎 編集:石田仁志)

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