【1月30日 時事通信社】難民や移民の入国を停止・制限したトランプ米大統領による大統領令から一夜明けた28日、米国や世界各地で混乱と不安が拡大した。ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港をはじめ、各地の空港で当局がイラク人らを多数拘束。航空各社は送還の可能性のある旅客の米国便への搭乗を拒否し、影響を受けた人は数百人に上った。ニューヨークの連邦地裁は28日夜、合法な滞在資格を持つ人々の送還停止を命じ、大統領令の執行を一部阻止した。 大統領令はシリア難民の無期限受け入れ停止などが柱。米メディアによると、米入国を90日間停止されるのはシリア、イラク、イラン、イエメン、リビア、ソマリア、スーダンの7カ国の出身者。イスラム教徒が多数派の国ばかりだ。ロイター通信によると、大統領令によって400人近くに影響が及んだ。100人以上が乗り継ぎで米国への入国を拒否され、航空会社が200人近くの米国便搭乗を受け付けなかった。プリーバス大統領首席補佐官は29日午前、NBCテレビの番組で「まだ二十数人が拘束されている」と述べた。 ケネディ空港では大統領令署名後、一時少なくとも12人が拘束された。その後、一部は解放され、米国に入国した。米軍の通訳などとして勤務したイラク人男性は解放後、空港で報道陣に「まるで自分が何か悪いことをしたかのようだった。驚いた」と振り返った。 空港には地元選出の下院議員や2000人以上のデモ隊が詰め掛け、残る拘束者の解放を要求した。デモ隊はシカゴやシアトル、ロサンゼルス、ダラスなど全米各地の空港に集結し、抗議した。29日も9都市で大統領令への抗議デモが計画され、反発が強まっている。 また、米国の大学で学ぶ多数の留学生が国外に足止めされていると報じられた。こうした中、トランプ大統領は28日、「(入国制限は)非常に順調だ。空港やそこら中を見て分かる通りだ」と自らの措置を自賛した。 一方、米政府高官は28日、大統領令が永住権カード(グリーンカード)保有者も対象にしていると明らかにした。7カ国出身者は、米国に再入国可能か領事館などに個別に確認する必要があると警告している。 永住権者には衝撃が走り、政治活動のためイランから米国へ逃れたモハマド・ホセイン・ザイヤさん(33)はロイターに「米国でこんなことが起きるとは思わなかった」と話した。当局者はCNNテレビに、制限対象になる恐れがある人は米国外に出ない方がいいと話している。 ロイターなどによれば、IT大手のグーグルは、制限対象となる可能性のある社員の米国帰国を指示。米国での滞在許可を持つイラン人社員は、大統領の署名の数時間前に米国に戻ったという。制限対象国出身者の海外出張などを見合わせる企業が増えることも確実だ。(c)時事通信社