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焦点:霧晴れぬ日本の自動車株、くすぶる追加関税リスク

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[東京 27日 ロイター] – 日本の 自動車株を覆う霧が晴れない。 日米物品貿易協定(TAG)の 交渉中は追加関税が回避されることになったが、 あくまで交渉期間内に限った話だ。 約7兆円を超える対日貿易赤字削減の 有効な「カード」 として、 日本の 対米自動車輸出の 削減を米国
[東京 27日 ロイター] – 日本の自動車株を覆う霧が晴れない。日米物品貿易協定(TAG)の交渉中は追加関税が回避されることになったが、あくまで交渉期間内に限った話だ。
約7兆円を超える対日貿易赤字削減の有効な「カード」として、日本の対米自動車輸出の削減を米国がいずれ使うリスクが消えたわけではない。米自動車需要はピークを越え、次世代車両の開発費負担ものしかかる。マーケットの見方は厳しいままだ。
<対日赤字の7割占める自動車>
トヨタ自動車 の株価は反発しているものの、上げ幅は限定的。米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受けてやや円高に振れていることもあるが、27日前場段階では前日の下落分は取り戻せていない。他の自動車株や部品株も同様の動きとなっている。
安倍晋三首相は26日の日米首脳会談で貿易交渉中は自動車への追加関税は発動されないことを確認したと明言したが、市場は「あくまで交渉の間だけの約束事。その先はわからない」(外資系証券)と受け止めているためだ。
2017年の米国の貿易収支によると、対日貿易赤字は688億ドル(約7兆7000億円)。このうち自動車と自動車部品の赤字額は492億ドル(5兆5000億円)と71%を占める。
シティグループ証券・チーフエコノミスト、村嶋帰一氏は「当面は関税回避できたことは、日本にとってポジティブ。だがこの先、トランプ大統領が貿易赤字の削減を求めてくる恐れは残る。その際は、対日赤字の大部分を占める自動車が攻撃対象になりかねない」と指摘する。
また米商務省は自動車・同部品の輸入が安全保障上の脅威となっているかどうか、通商拡大法232条に基づき調査を行っている。判断は来年2月になると見込まれており、そこも次の焦点になりそうだ。
<日本の「聖域」>
「中国に対抗するグループを米国が作ろうとするなら、欧州と日本を引き入れるはず。両地域経済に大きな影響を与える自動車への関税や輸出規制は控えることになるのではないか」(三井住友銀行のチーフ・マーケット・エコノミスト、森谷亨氏)との見方もある。
米国の貿易赤字全体は7961億ドル(2017年)で、対中国が3752億ドルと47%を占める。対日赤字は全体でみれば8.6%にすぎない。
今回の日米通商交渉では、「聖域」として自動車産業を守る日本の強い姿勢がみえた。17年の自動車輸出額は11兆8000億円で、そのうち米国向けは4兆6000億円と約4割を占める。
日本の自動車産業は、完成車メーカーを頂点に部品のサプライチェーン(供給網)が組まれ、機械や素材なども含めて裾野が広いのが特徴だ。米国にとって日本の自動車は貿易上大きな比重ではないが、日本にとっては死活問題だ。
「北米自由貿易協定(NAFTA)の比ではない。日本の産業に桁違いの影響がある」──。フィデリティ投信・運用本部のインベスメントディレクター、福田理弘氏は対米輸出車に25%の関税がかけられた場合の影響をこう指摘する。
みずほ証券の試算によると、米国の自動車輸入関税が25%に引き上げられた場合、自動車部品も含めれば2兆円のコスト増となる可能性がある。東証1部企業全体の19年3月期の経常利益予想(金融を除く)42兆6000億円の約5%に相当し、「日経平均で1000円級の下げ要因になる」という。
<のしかかる複数の弱気要因>
もっとも、日米自動車交渉が無難に終了したとしても、悪材料出尽くしとして自動車株が反発するのは難しいかもしれない。米自動車需要のピークアウト予想や、次世代車両の開発に向けたコスト増など弱気要因が重くのしかかっているからだ。
米国自動車販売は下り坂。 IHS Markitの市場予想によると、米国の18年の自動車販売(総重量6トン以下のライトビークル)は1703万台。17年の1724万台から減少する見通しで、19年は1676万台へとさらなる減速が予想されている。
電動化や自動運転化に向けた研究開発コスト増も重荷だ。インベスコ・アセット・マネジメントの取締役運用本部長、小澤大二氏は「研究開発投資にフリーキャッシュを使わざるを得ないが、最終的に勝ちゲームになるか分からない。その分将来に対する不確実性から、バリュエーションを押し下げる要因になる」と指摘する。
BNYメロン・アセットマネジメント・ジャパンの日本株式運用部長、王子田賢史氏は「この話(日米交渉)が出る前から、完成車セクターに弱気。特段投資を増やすつもりはない」と話す。
9月半ばからの上昇でTOPIX は前年末水準まで戻しているが、東証業種別指数の輸送用機器 は5.1%と依然大きなマイナス。このアンダーパフォームを修正するのは容易ではなさそうだ。
(杉山健太郎 編集:伊賀大記)

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