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元徴用工への賠償「協定の対象外」 韓国最高裁が初判断

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朝鮮半島が日本統治下にあった戦時中、 日本本土の 工場に動員された韓国人の 元徴用工4人が、 新日鉄住金を相手に損害賠償を求めた訴訟の 上告審で、 韓国大法院(最高裁)は30日、 個人の 請求権を認めた控訴審判決を…
朝鮮半島が日本統治下にあった戦時中、日本本土の工場に動員された韓国人の元徴用工4人が、新日鉄住金を相手に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、韓国大法院(最高裁)は30日、個人の請求権を認めた控訴審判決を支持し、同社の上告を退けた。これにより、同社に1人あたり1億ウォン(約1千万円)を支払うよう命じた判決が確定した。
韓国の裁判所で、日本企業に元徴用工への賠償を命じる判決が確定したのは初めて。日本政府は、元徴用工の補償問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」との立場を取る。
韓国政府は、慰安婦問題とは異なり、徴用工問題は解決済みとの立場だった。これを変えて判決のように賠償を求めた場合、日韓合意に基づいてつくられた元慰安婦の「和解・癒やし財団」の解散の動きとも合わせ、日韓関係がさらに悪化するおそれもある。
裁判で最大の争点となったのは、「協定によって原告の賠償請求権が消滅したか」だった。判決は、一連の動員は「日本政府の朝鮮半島への不法な植民地支配や、侵略戦争の遂行と結びついた日本企業の反人道的な不法行為」だったと指摘。原告が求めているのは「未払い賃金や補償金ではなく、強制動員被害者の日本企業への慰謝料請求権だ」として「協定の適用対象に含まれない」と認定、消滅していないとした。
同様の訴訟は、新日鉄住金のほか不二越(富山市)など約80社を相手にした計14件が係争中だ。今回の確定判決を受け、賠償命令が相次ぐ可能性が高い。韓国政府が認定した元徴用工は約22万6千人(故人を含む)に及び、さらに訴訟を起こす可能性もある。
今回の訴訟の原告は、新日鉄住金が賠償に応じない場合、資産差し押さえなどの強制執行手続きができる。弁護団は同社の資産は韓国にないとして、第三国での手続きを視野に入れ、同社の資産や債権が差し押さえられるおそれがある。新日鉄住金は30日、「請求権協定や日本政府の見解に反するもので極めて遺憾」とし、「日本政府の対応状況なども踏まえ、適切に対応する」との談話を出した。
安倍晋三首相は30日夕、記者団に「1965年の日韓請求権協定によって、完全かつ最終的に解決している」とし、「判決は国際法に照らして、あり得ない判断だ」と厳しく批判した。そのうえで、「日本政府としては毅然(きぜん)と対応していく」と述べた。河野太郎外相も韓国の李洙勲(イスフン)駐日大使を外務省に呼び、「請求権協定に明らかに違反し、日本企業に不当な不利益を負わせ、両国の法的基盤を根本から覆すものだ」と抗議した。さらに、「日本の企業、日本国民に不利益がないように直ちに必要な措置を厳格にとっていただきたい」と求めた。
韓国の李洛淵(イナギョン)首相は「司法判断を尊重し、被害者たちの傷が早期に最大限治癒されるよう努力していく」とする政府声明文を発表。「両国関係を未来志向的に発展させていくよう希望する」とも強調した。李首相が今後、韓国の関係部署や民間の専門家などと対応策をまとめるという。(ソウル=武田肇)
・被告(新日鉄住金)の上告を棄却し、原告(元徴用工ら)に1億ウォンずつの慰謝料支払いを命じた控訴審判決は確定する
・原告らの損害賠償請求権は、日韓請求権協定の適用対象外になる
・原告らは韓国で損害賠償請求権を行使できる

〈韓国の元徴用工問題〉 戦時中に日本の工場や炭鉱などに労働者として動員された朝鮮半島の出身者が戦後、日本企業に損害賠償を求めてきた問題。日本政府は1965年の日韓請求権協定で補償に関しては解決済みとの立場で、元徴用工らが日韓で日本企業を相手に訴訟を起こし、争ってきた。日本では2007年に最高裁が元徴用工らを敗訴とした判決が確定。韓国では元徴用工や遺族ら約1千人の訴訟が続いている。韓国政府が認定した元徴用工は約22万6千人に上る。

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