運輸安全委が調査報告書 「服薬治療中を申告せず」 も判明 長野県松本市で昨年3月、 同県の 消防防災ヘリコプターが墜落し9人全員が死亡した事故で、 運輸安全委員会は25日、 男性機長(当時56歳)が、 海外旅行による疲労の ため瞬間的に眠気に襲われるなどし、 危険を回避できなかったと考えられるとの 調査報告書を公表
長野県松本市で昨年3月、同県の消防防災ヘリコプターが墜落し9人全員が死亡した事故で、運輸安全委員会は25日、男性機長(当時56歳)が、海外旅行による疲労のため瞬間的に眠気に襲われるなどし、危険を回避できなかったと考えられるとの調査報告書を公表した。事故との関連は不明だが、機長が服薬治療中であることを毎年の航空身体検査時に適切に申告していなかったことも判明した。
報告書によると、ヘリは昨年3月5日午後1時33分、救助訓練のため松本空港を離陸。空港の東側にある山地に差し掛かったところで南東方向に旋回し、高度1740メートルで水平飛行中の同1時41分ごろ、鉢伏山(1929メートル)山腹の樹木に機体上部の回転翼を約40メートルにわたって接触させ、墜落した。地表に近づいたのに高度を上げず、機体が水平な状態で接触したとみられる。
事故後に回収された機内を撮影した動画では、視界が確保されていたことが確認できた一方、機体の異常を示す警報音や異音は記録されていなかった。また、事故の1分30秒前に機長が右腕を上げる様子が映っており、この時点までは機長の意識レベルが低下するなどの異常はなかったと考えられるという。
機長は事故の6日前に10日間のフィンランド旅行から帰国しており、運輸安全委は時差による疲労の可能性に着目。事故直前、地表に近づいたのに高度を上げるなどの回避操作をした形跡がないため、瞬間的に眠気を催すなどし、正常な判断ができない状態になった可能性があると指摘した。
機長は、甲状腺疾患などで投薬治療を受けていたとみられるが、航空身体検査の際に服薬や既往歴について指定医に申告していなかった。機長が服用していた薬は、国土交通省の指針で、医師に報告して航空業務を中断する必要があると定められた種類だった。事故当日に服用したかは、突き止められなかったという。
これを受け、運輸安全委は25日、操縦士らに対し服薬や既往歴について適切な自己申告を促すよう、石井啓一国交相に意見を提出した。【花牟礼紀仁】