【ワシントン=吉野直也】オバマ米大統領は10日夜(日本時間11日午前)、地元、イリノイ州シカゴで最後の演説に臨んだ。50分を超える演説で、金融危機からの脱却など2期8年の任期中のレガシー(政治的な功績)を力説。分断が深まる米国を踏まえ、民主主義のもとに国民の結束を訴えた。20日に発足するトランプ次期政権への円滑な移行も約束した。
10日、最後の演説に臨むオバマ大統領(シカゴ)=AP
「お別れ演説」は歴代大統領の慣例だが、大統領の地元でするのは初めて。ミシェル夫人やバイデン副大統領夫妻も同席した。
オバマ氏は演説で2期8年の任期を振り返り「私をより優れた大統領にしてくれた」と国民に謝意を表明した。「今夜もっとも集中して語りたいのは民主主義の状態だ」と述べ、排他的な主張を掲げて大統領選に勝利したトランプ氏の政権運営への懸念を示唆した。
「民主主義の維持には相違を超えて結束することが重要だ」と語り、国民の結束を促した。トランプ次期政権への「可能な限り円滑な移行を確実にする」とも強調した。米国が建国以来、重視してきた民主主義や平等、自由の理念や価値を訴え、未来に向けて社会の多様性が重要だと呼びかけた。
オバマ氏は金融危機の脱却により、自動車産業が再生し、雇用が創出された成果を誇示。最後に「Yes, we can(我々はできるんだ)」という決めぜりふで結んだ。米国が尊重してきた理念や価値を改めて繰り返すのは「米国第一主義」を標榜し、移民やイスラム教徒に排他的な考えをとるトランプ氏をけん制する狙いがある。
トランプ氏は医療保険制度改革法(オバマケア)の廃止などオバマ氏のレガシーを覆す構えをみせている。
米調査機関ギャラップの最新の世論調査によると、オバマ氏の支持率は55%で、高水準を維持。「一つの米国」などオバマ氏の理想は道半ばに終わったが、人気はなお根強い。20日に大統領に正式に就任するトランプ氏は11日にニューヨークで大統領選勝利後初の記者会見をする。