産経新聞 1/3(火) 10:26配信
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は「新年の辞」で、米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射をちらつかせる一方で、トランプ次期米政権に対する踏み込んだ言及は避けた。どのような対北政策を取るか見通せず、出方を見定めようとしている可能性がある。
北朝鮮は射程が6千キロ以上といわれるICBM「KN08」を開発中とされ、ICBMのエンジンの燃焼実験の「成功」を公表するなどしてきた。
金委員長の主張に対し、米国務省報道官は1日、「あらゆる手段を動員し、違法行為には代償が伴うことを悟らせる」と韓国の聯合ニュースの取材に述べた。韓国統一省も「威嚇を強く糾弾する」との論評を発表した。
ただ、金委員長は米国を刺激するICBMに言及しながら、20日に発足するトランプ新政権に直接触れることはなかった。「時代錯誤的な敵視政策を撤回する勇断を下すべきだ」と従来の要求を繰り返すだけにとどまった。
トランプ氏は、金委員長について「核でいたずらできないようにしなければ」と発言したかと思えば、「ハンバーガーを食べ」ながら話せると対話に意欲も示しており、北朝鮮としても次期米政権の方向性を見極める狙いがありそうだ。
今回の「新年の辞」は、韓国の朴槿恵大統領を呼び捨てにして糾弾する一方、韓国全土に拡大したデモを「南朝鮮(韓国)人民の闘争史に顕著な足跡を刻んだ」とたたえて共鳴を表す異例の演説ともなった。
韓国に対しては「北南関係改善を望むなら、誰とでも手を取る」とも表明。次期大統領選では北朝鮮に融和的な野党が優位に立っているとみられ、親北政権への交代を見越して対話攻勢に出たとも読み取れる。
一方、金委員長は「能力がついていかない悔しさと自責の念の中で昨年1年を送った」と最高指導者として異例の“反省”も口にし、人民に「身も心もささげ」ると強調した。経済低迷などの問題の責任を幹部らに転嫁し、非難の矛先をそらす思惑があるとみられる。(ソウル 桜井紀雄)
最終更新:1/3(火) 10:26