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3月6日、北朝鮮の弾道ミサイル発射について – 西村金一

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政策提言委員・ 軍事アナリスト 西村金一弾道ミサイルは午前7時34分頃、 北朝鮮西岸の 東倉里(トンチャンリ)付近から4発ほぼ同時に発射された。 ミサイルは東方へ約1000キロ飛行し、 高度は約260キロに達した。 防衛省によると、 4発とも秋田県男鹿半島の 西300~350
政策提言委員・軍事アナリスト 西村金一
弾道ミサイルは午前7時34分頃、北朝鮮西岸の東倉里(トンチャンリ)付近から4発ほぼ同時に発射された。ミサイルは東方へ約1000キロ飛行し、高度は約260キロに達した。防衛省によると、4発とも秋田県男鹿半島の西300~350キロの日本海に落下し、うち3発は日本の排他的経済水域(EEZ)内に、残り1発もEEZ付近に落ちた。日本のEEZ内に落下させたのは、昨年(2016年)の9月以来2回目だ。日本の近海に落下させる恫喝が常態化してきていると言える。
毎年、米韓合同軍事演習が始まると、北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、韓国大統領府である青瓦台を砲撃するなど、激しく挑発行為を行う。今年も3月1日からの米韓合同演習「フォールイーグル」が行われることで、ミサイルを発射するであろうと予想していたが、予想どおりに発射した。
朝鮮中央通信は今回、「在日米軍基地が標的だ」と初めて言及した。「日本に米軍基地があるから日本が標的になる」だから、「日本に在日米軍基地はいらない」という世論誘導と日米関係に楔を打つことを目論んでいる。この発言で誰が得をするのかを考えると、まるで、中国が北朝鮮に発言させているようだ。
約1000キロの飛距離や約260キロの弾道の高度から見て、KN-08、その改良型KN-14、そしてテポドン2の次世代ミサイル「テポドン3」の可能性はない。
昨年9月と今回のミサイル発射では、スカッドERミサイルの射程が伸びている。スカッドERは、本来、スカッドミサイルの弾頭部分を軽くして飛翔距離を延ばしたものだ。D型とも呼称される。ERタイプは、以前、射程が700キロと分析されていた。
昨年9月のミサイル発射の映像を分析すると、射程からノドンと見積もっていたが、TEL(運搬車両兼起倒式発射機)の車軸の数からスカッドと判明した。その時の射程が約1000キロ、今回のものも1000キロである。
何故、スカッドERの射程が300キロも伸びたのか。その鍵は、昨年9月に実施したエンジンテストにある。4月のエンジンテストと9月のエンジンテストを比較すると、4月のエンジンが大型でオレンジの炎であったのに対し、9月のエンジンは4月のものより小型で炎がオレンジと黄色であった。炎の色の変化は、温度が約800度から約1000度に上昇したことを表わす。つまり、エンジンが小型化し、これまでのものより能力が1.5倍ほど高まったものと見積もられる(参照「昨年4月と9月のエンジンテスト比較」)。そのエンジンが昨年9月と今回のミサイルに搭載されて、射程を延伸したものと分析できる。
この改良されたエンジンを4基、或いは6基束ねて搭載することによって、北朝鮮が求めているICBMのエンジンになる。ICBMの完成に徐々に近づいてきた。これらのことから、今回の発射は、ICBM開発を一歩進めたと言える。
昨年4月のエンジンテスト
昨年9月のエンジンテスト
西村 金一(にしむら きんいち)
1952年、佐賀県生まれ。陸上自衛隊少年工科学校生徒入隊、法政大学文学部地理学科卒業、自衛隊幹部候補生学校修了、幹部学校指揮幕僚課程(33期CGS)修了。
防衛省情報分析官、防衛研究所研究員を経て、第12師団第2部長、少年工科学校総務部長、幹部学校戦略教官等として勤務。定年退官後、三菱総合研究所国際政策研究グループ専門研究員、ディフェンス・リサーチ・センター研究委員、現在は軍事・情報戦略研究所所長。
著書『北朝鮮の実態』―金正恩体制下の軍事戦略と国家のゆくえ―(原書房)、共著『自衛隊は尖閣諸島をどう戦うか』(祥伝社)がある他、メディアへの出演多数。

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