シンガポールは「場所貸し外交」 を得意としてきた=沢井慎也撮影 米朝首脳会談が開かれるシンガポールは小国ながら「東洋の スイス」 を目指して中立外交を掲げ、 東西各方面と良好な関係を維持することで存在感を示してきた。 米朝会談は同国の 安全さや秩序、 インフラの 良さを対外的に宣伝する絶好の 機会にもなる。 シンガポールの 「場所…
シンガポールは「場所貸し外交」を得意としてきた=沢井慎也撮影 米朝首脳会談が開かれるシンガポールは小国ながら「東洋のスイス」を目指して中立外交を掲げ、東西各方面と良好な関係を維持することで存在感を示してきた。米朝会談は同国の安全さや秩序、インフラの良さを対外的に宣伝する絶好の機会にもなる。 シンガポールの「場所貸し外交」は今に始まったことではない。 注目されたのは2015年11月、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と台湾の馬英九総統(当時)との会談だ。 1949年の中台分断以来、初の最高指導者同士の会談。両氏の「81秒間の固い握手」は、集まったメディアを通じて世界に報道された。 2015年11月の中台首脳会談の開催地もシンガポールだった=ロイター 中台首脳会談には20年以上遡る布石があった。1993年、中台の窓口機関トップが初めて会談したのがシンガポールだったのだ。リー・クアンユー初代首相が中台の双方にパイプを維持し、信頼関係を築いていたとされる。 08年、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の米朝代表が、停滞していた協議の進展を目指して会談したこともあった。 「我々が手を挙げて米朝会談を呼び込んだりはしていない」とシンガポール外務省高官は強調するが、会談の成功は同国にとって大きな実績になる。 5月10日、初めて会談場所の確定をトランプ大統領がツイッターで流すと、シンガポール外務省は「喜んでホストする」との声明文を即座に発表した。リー・シェンロン首相もツイッターに「平和に向けた重大な一歩だ」と投稿し、トランプ氏のつぶやきを転載した。トランプ大統領が一旦中止を発表しても準備のスピードは緩めなかった。(シンガポール=谷繭子)