現職幹部の 逮捕に文部科学省では大きな動揺が広がった。 科学技術・ 学術政策局長の 佐野太容疑者(58)は次官候補にも名前が挙がるエリート。 私大支援事業の 対象にする見返りに自分の 子供を合格させる――。 文教行政を預かる官僚としてあるまじき不祥事に、 職員らは言…
現職幹部の逮捕に文部科学省では大きな動揺が広がった。科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者(58)は次官候補にも名前が挙がるエリート。私大支援事業の対象にする見返りに自分の子供を合格させる――。文教行政を預かる官僚としてあるまじき不祥事に、職員らは言葉を失った。 受託収賄容疑で局長が逮捕され、記者の質問に答える林文科相(4日午後、東京・霞が関) 「仕事をたんたんとこなす優秀な上司。家族のことやプライベートなことは言わないタイプだった」。佐野容疑者の直属の部下だという男性はニュースを聞いてぼうぜんとした様子。今回の事件では、東京医科大側が私大支援事業で便宜を求めたとされる。私学助成に関わる部署の職員は「事実関係がまだよく分からず、何とも言えない」と戸惑いを隠せなかった。 佐野容疑者は早稲田大学の修士課程を修了後、当時の科学技術庁に入った。省内では社交的で人当たりのよい人物として知られ、2012年には国会との調整を担当する総務課長に就任。「国会折衝にたけている」という評価を得ていた。科技系の幹部が総務課長に就いたのは珍しいという。 その後も官房長などの要職を歴任した佐野容疑者。男性幹部の一人は「優秀だが、部下に仕事をまかせることもできる。次官になるのは間違いないといわれていたエース。あんな不正に手を染めるとは信じられない」と驚いた。 文科省は17年に組織的天下りが発覚するなど、不祥事が続く。ある女性職員は「少し落ち着いてきたと思ったところだった。文科行政の信頼に関わる。本当なら残念」と表情を曇らせる。 一方、汚職事件の舞台になった東京都新宿区の東京医科大学。医学科2年の男子学生(19)は「もし局長の子供の代わりに誰か落ちていたとしたら、すごく嫌だと思う」と非難した。別の男子学生(20)は「まだ大学側から説明は何もない。もう少し事実関係が明らかになるのを待ちたい」。 東京医科大の広報担当者によると、5日に学生に対して、通常通り大学運営を続けることなどを説明する。担当者は「不正が個人か組織ぐるみなのかは不明で、どの段階で起きたかも把握できていない」と疲れた様子で話した。 国会では野党が批判を強めた。立憲民主党の辻元清美国会対策委員長は4日、「安倍晋三政権の体質だ」と批判した。学校法人「加計学園」を巡る問題について「首相も友達を優遇したのではないかと言われている。今回の局長も行政を私物化している」と述べた。