八回広島2死一、 二塁、 菊池が左中間に勝ち越し3ランを放つ=共同 八回1―1と追いついたあとの 2死一、 二塁で打席に立った広島・ 菊池は2ボール後の 甘いストライクを見逃した。 「自分で決めようというの ではなかった」 と…
八回広島2死一、二塁、菊池が左中間に勝ち越し3ランを放つ=共同
八回1―1と追いついたあとの2死一、二塁で打席に立った広島・菊池は2ボール後の甘いストライクを見逃した。「自分で決めようというのではなかった」という理由で、定石通り様子をうかがっただけ。
だが、相手の動揺を見越し、慌てなくても、もっといい球がくるさ、と舌なめずりする音さえ聞こえてきそうな姿に、すでに快打の予感があった。次の球をたたいた打球が左中間フェンスを越えて「王手」をたぐり寄せる3ランとなった。
一塁のベンチ前に、子どものように跳ね回る新井の姿があった。菊池が「あの一打に乗せられた」と感謝するように、押せ押せのムードをつくったのは今季限りの引退を決めているベテランだった。
出番は八回、2死無走者から代打松山が四球で歩いたあとだった。投手ジョンソンの代打に起用されたのだが、最初は新井らしくなかった。畠に果敢に攻められ、右狙いなら右狙い、強振なら強振、といういつものふんぎりがみられないスイングが続いた。
だが、5球目の時に、松山の代走の上本が二盗を決めたことで、迷いが消えた。「タカシ（上本）が走ってスコアリングポジションに行き、もう一回気持ちをぐっと高めることができた」。次のフォークボールをとらえた同点打が左翼線に弾んだ。
苦しい展開も、終わってみれば、広島の控え層の厚みを強調するためのシナリオにすぎなかった。七回まで1安打のみ。それでも緒方監督は「1人走者が出れば、空気が変わると思った」。シーズン中の戦いさえできれば、という確信に満ちている。（篠山正幸）
