フランスの極右政党「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ル・ペン党首が5日、4月の大統領選に向けて本格始動し、グローバリゼーションとイスラム過激主義を攻撃した。
ルペン氏は東部リヨンで集会を開き、支援者を前に、グローバリゼーションの動きが徐々に地域社会を窒息させていると主張した。FNこそがフランス国民の政党だと強調する党首は、「自由で独立した民主国家」を目指すと述べ、グローバリゼーションは「奴隷が作ったものを失業者に売りつける」仕組みだと批判。これに対してFNが提示する解決策は、「知的な保護主義と経済的愛国主義」が導く「地元革命」だと強調した。
欧州連合(EU)については、「なにひとつ約束を守っていない」「失敗」だと批判し、加盟条件を根本的に再交渉するとあらためて約束。再交渉が破綻すれば、EU加盟について国民投票を実施すると、これまでの公約を繰り返した。
自分たちこそ元祖・反主流派の政党だと主張するFNは、英国のブレグジット(EU離脱)投票や米国のドナルド・トランプ氏当選などにみられる、変化を期待する人々の勢いに乗りたい考えだ。
ル・ペン氏は 3日午前にパリのルーブル美術館で起きた襲撃事件 にも言及。フランスが「イスラム原理主義のくびき」につながれ、女性が「カフェに入ったりスカートをはくことを禁止される」国になってしまうと、暗い展望を描き、イスラム過激主義の脅威を警告した。フランスのムスリム(イスラム教徒)人口は約500万人で、西欧最多。
BBCパリ特派員のルーシー・ウィリアムソン記者は、全体の3割以上は得票したことがないFNは、従来の過激な主張をやわらげ、ソフトなイメージを広めて支持基盤を広げようとしていると説明する。
4月23日に第1回投票が行われる今回の大統領選は、過去数十年で最も予想のつかない戦いと言われている。与党・社会党を率いる現職の フランソワ・オランド大統領は、再選を目指さないと表明 している。
これまでの世論調査では、ル・ペン党首は第1回投票は勝ち進むが、5月7日の決選投票で敗れるだろうとみられている。
ル・ペン党首の演説に先立ち、フロリアン・フィリポ副党首は同じリヨンの会場で、ブレグジットやトランプ米大統領によって政治への関心が新たに高まっていると発言。支持者を前に、「人々は目覚めている。ブレグジットを見て、トランプを見て、『投票に行く甲斐がある』と自分に言い聞かせている」と演説した。
オランド政権の前経済・産業・デジタル相で、中道無所属候補として出馬しているエマニュエル・マクロン氏も、週末にかけてリヨンで集会を開いた。元銀行家のマクロン氏は4日、親EUで自由貿易を支持。FNとは正反対の政策を提示した。
中道右派・共和党の候補、フランソワ・フィヨン氏 が経済スキャンダルを抱える状況で、マクロン氏が決選投票まで進む可能性は高まっているとみられている。
与党・社会党は1月末、 急進左派のブノワ・アモン前国民教育相 を候補に選んだ。今のところ世論調査の支持率は他の3候補より数ポイント後れを取っている。
最左派・左翼戦線のジャン=リュック・メランション候補も5日にリヨンで演説し、同時にホログラムとしてパリの会場にも登場した。世論調査の支持率約10%のメランション氏は、富の再分配を呼びかけ、EUを批判した。
主要5候補のうち3人が、パリとマルセイユに次ぐフランス第3の大都市リヨンで大規模な集会を開いたり、大統領選に向けて本格的に始動したことは、フランス国内でも注目されている。
仏無料紙バン・ミニュート(「20分」の意味) によると、FNがリヨンを選んだのは国の中心にあり交通の便が良いことに加え、「ガリア人の首都」だからだという。これに対してマクロン氏は、リヨンに続く人文主義と経済自由主義の伝統を重視し、メランション氏は新しい挑戦を好んだのではないかと、同紙は書いている。
(英語記事 France election: Far-right’s Le Pen rails against globalisation )