Start Japan Japan — in Japanese ストーリー:熊本地震で犠牲の大学生(その1) 親友の祝宴、見守る

ストーリー:熊本地震で犠牲の大学生(その1) 親友の祝宴、見守る

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「いまだに晃(ひかる)がこの 世にいない感じがしなくて、 酔っ払うとつい電話してしまうんです。 そしてハッとするんです、 しまった、 って」 。 熊本地震の 本震が発生した昨年4月16日、 熊本県南阿蘇村の 阿蘇大橋付近を車で走行中に土砂崩れに巻き込まれ亡くなった大和晃さん(当時22歳)の 親友、 戸田晃輝(こうき)さん(23)=熊本市=は今も喪失感を抱く。
「いまだに晃(ひかる)がこの世にいない感じがしなくて、酔っ払うとつい電話してしまうんです。そしてハッとするんです、しまった、って」。熊本地震の本震が発生した昨年4月16日、熊本県南阿蘇村の阿蘇大橋付近を車で走行中に土砂崩れに巻き込まれ亡くなった大和晃さん(当時22歳)の親友、戸田晃輝(こうき)さん(23)=熊本市=は今も喪失感を抱く。
「ボクでいいと?」。2015年10月、妻の彩香さん(22)と暮らすマンションで晃さんに婚姻届の証人欄のサインを求めた時の、はにかんだ顔が忘れられない。<大和晃>。思いを込めた力強い字だった。
会社員の戸田さんは、13年春に熊本学園大に入学した晃さんと友人を介し知り合った。社会人と学生という垣根はあっても同学年。戸田さんが彩香さんと交際を始めた後も、晃さんの黄色い愛車でドライブをしたりした。その愛車が阿蘇大橋から約400メートル下流の土砂の中から発見されたのは、本震から3カ月以上たった7月24日。県の捜索打ち切り後も捜し続けた両親らの執念で、晃さんは同県阿蘇市の自宅に帰った。
今年2月19日。熊本市内で結婚式を挙げた戸田さん夫妻は、晃さんの父卓也さん(58)と母忍さん(49)を招待した。両親の間に晃さんの席も設けた。証人になっていたことを地震後に知った両親は、卓上に置いた笑顔の遺影を見て思った。「晃はどんなお嫁さんと式を挙げたのかな」。形見となった銀色の腕時計を身につけた忍さんは、テーブルに回ってきた新郎新婦に声をかけた。「晃も連れてきたからね。触ってあげて」。2人が腕時計に触れると、2組の夫婦の目に涙があふれた。
熊本地震で唯一行方不明の状態が続いた大和晃さん。困難な捜索に挑んだ人々の姿と、家族を追った。 <取材・文 野呂賢治>

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