分子でできた超微細な「ナノカー」 を走らせる世界初の 国際大会が28、 29日にフランスで開かれ、 日本から出場した物質・ 材料研究機構の チームは途中棄権した。 同チームは順調なスタートを切ったが、 主催者側が用
分子でできた超微細な「ナノカー」を走らせる世界初の国際大会が28、29日にフランスで開かれ、日本から出場した物質・材料研究機構のチームは途中棄権した。同チームは順調なスタートを切ったが、主催者側が用意したコンピューターの不具合でナノカーが壊れるトラブルに見舞われた。 「ナノカーレース」には日米欧の6チームが参加。それぞれ違った構造の分子を「車」に見立て、金表面にできた長さ100ナノ(ナノは10億分の1)メートルのコースを走らせ、36時間の制限時間内にゴールできるかどうかを競う。特殊な顕微鏡で様子を確認しながら、探針で電子を注入するとナノカーが進む。精密な分子の制御技術が求められる。 物材機構が走らせたナノカーは長さ2.1ナノメートル。炭素と水素、酸素の原子88個を組み合わせた。レース開始直後に1ナノメートルを走ったが、コンピューターの不具合で金のコースやナノカーが壊れた。レース復帰に向けた作業に取り組んだが、再び同じ不具合が起きたため、途中棄権を決めた。 優勝は米ライス大学とオーストリア・グラーツ大学の合同チームと、スイス・バーゼル大学のチーム。米オーストリアの合同チームは最も早く完走したが、金ではナノカーが観測できないとして銀のコースを使用した。 チームリーダーを務めた物材機構の中西和嘉主任研究員は「途中棄権せざるを得なかったが、ナノカーレース自体が様々な実りある研究成果とともに終わったことにほっとしている」とコメントした。