「共謀罪」 の 構成要件を改めて「テロ等準備罪」 を新設する改正組織犯罪処罰法が可決・ 成立したことで、 一部の 事件では捜査の 進め方が変わることになり…
「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が可決・成立したことで、一部の事件では捜査の進め方が変わることになります。 これまでの刑法では、原則として実際に起きた犯罪行為を処罰することになっています。例外的に、犯罪が実行される前の行為を処罰する「予備罪」などの規定はありましたが、客観的に見て実行の危険性が高くなった段階でなければ適用できません。 一方、「テロ等準備罪」は犯罪の計画から実行までの間、何らかの準備行為を行えば、どの時点でも適用することができます。 これによって、捜査機関が「組織的犯罪集団」と見なしたグループに対しては、より早い段階で裁判所の令状を取って捜索や逮捕などの強制捜査を行うことができるようになります。 捜索や逮捕には集団が犯罪を「計画」し、何らかの「準備行為」を行ったという証拠が必要です。このため、電話やメール、それにソーシャルメディア上のやり取りや、ほかの事件の捜査で得られた供述やメモなどの証拠をもとに、グループで行動をともにしている人たちが犯罪につながるような計画を話し合っていないか捜査することになると見られます。 ただ、政府は「テロ等準備罪」は捜査機関に電話やメールなどの傍受を認めている「通信傍受」の対象ではないとしています。 警察はこれまでどおり裁判所の令状を取って、グループの拠点となっている場所を捜索したり、携帯電話やパソコンを差し押さえたりするなどして証拠を集める必要があります。 また、資金の調達や関係場所の下見などの「準備行為」を行っていないか、行動を確認することになると見られます。 このように犯罪への関わりが疑われる集団に対しては、より早く捜査ができるようになる反面、犯罪と関わりのない人たちが巻き込まれやすくなるという懸念もあります。 具体的には、どのようなグループが「組織的犯罪集団」なのかや、どのような行為が「準備行為」にあたるのかが捜査機関の判断に委ねられているため、乱用されかねないという懸念です。 これについて刑事手続きに詳しい元裁判官からは、捜査機関が内部で基準を作り、具体的な根拠がなければ捜査を進めることができないようにすべきだという指摘が出ています。 また、捜索令状や逮捕状を審査する裁判官が捜査機関に詳しい説明を求め、厳格に判断する必要があるとしています。これまでの法体系を大きく変える改正だけに、一定の歯止めをかけながら慎重に運用していくことが求められています。