学校法人「加計学園」 の 獣医学部新設計画を巡り、 文部科学省に早期開学を働きかけたとされる内閣府は16日、 「総理の ご意向」 と迫った事実はなかったと発表した。 国会の 会期末が迫る中、 わずか1日で出した調査結果。 識者からは「結論ありき」 と批判の 声が上がった。 【中島和哉、 伊澤拓也、 神足俊輔】
学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画を巡り、文部科学省に早期開学を働きかけたとされる内閣府は16日、「総理のご意向」と迫った事実はなかったと発表した。国会の会期末が迫る中、わずか1日で出した調査結果。識者からは「結論ありき」と批判の声が上がった。【中島和哉、伊澤拓也、神足俊輔】
「『総理のご意向』などと伝えた認識はなく、総理からもそうした指示等は一切ありませんでした」。午前9時40分ごろ、閣議を終えて首相官邸エントランスに現れた山本幸三地方創生担当相は、早口で一気に資料を読み上げると、7分ほどで打ち切って足早に官邸を後にした。
内閣府が16日午前に公表した調査報告書では「『総理のご意向』という言い方はかなり特殊なもので、あまり(国家戦略特区を担う)地方創生本部事務局で使われているようには感じておらず、実際にこのような表現が打ち合わせの場で使われたとは考えにくい」と強調している。
一方、文科省の再調査のヒアリングでは、多くの文書を作成した専門教育課の課長補佐は「記載されている以上、こうした趣旨の発言があったのだと思う。総理までのレベルに話が行っていると感じた」と話しており、食い違いを見せている。
文科省内の受け止めは冷ややかだ。ある職員は「今回の件で内閣府は『知らぬ存ぜぬ』を貫いているし、官邸とすり合わせて発表しているのだろうから驚きはない。結局、真相はうやむやのまま収束し、文科省だけが信頼を失うのだろう」と自嘲気味。別の幹部は「文科省は再調査で出せるものは出したという立場だ。あとは国民が判断するほかない。ただ、この問題をこれ以上引きずって教育行政の停滞が続くのは避けたい」と話した。
内閣府の調査結果について、政治アナリストの伊藤惇夫さんは「一言で言うと、予想通りの結論だ。『行政をねじ曲げる行為があった』とは絶対に認めないと思っていた。官邸がこの問題を『文科省レベルの錯誤にすぎない』と止めようとしている姿勢が見える」と指摘する。
「全日本おばちゃん党」代表代行の谷口真由美・大阪国際大准教授は「一言で言うと『ほんま感じ悪い』。加計学園の問題は周りのおばちゃんたちの間でも『どうせウソばっかりやん』という声が高まっているが、内閣府の調査報告書からは『こう言っておけばいずれ収まるだろう』という政権側のおごりが透けて見える」と批判。「文科省の調査から1日後の発表という点も、やろうと思えばいつでもできたことを先送りして逃げようとしていたように感じる。世間に対してこうした態度を続けていれば、いずれボディーブローのように政権にダメージが効いてくるだろう」と断じた。