南スーダン国連平和維持活動(PKO)の 派遣部隊の 日報を陸上自衛隊が「廃棄した」 とした後も保管していた問題で、 防衛省の 防衛監察本部は28日、 特別防衛監察の 結果を公表した。 日報を非公表とする方針の 決定について、 黒江哲郎事務次官や岡部俊哉陸上幕僚長らが関与したと認定。 一方、 稲田朋美防衛相への 報告については「日報データの 存在について(幹部から)何らかの 発言があった可能性は否定できない」 と指摘するにとどめ、 稲田氏の 関与の 有無はあいまいな部分が残り、 全容解明には程遠い内容となった。
南スーダン国連平和維持活動(PKO)の派遣部隊の日報を陸上自衛隊が「廃棄した」とした後も保管していた問題で、防衛省の防衛監察本部は28日、特別防衛監察の結果を公表した。日報を非公表とする方針の決定について、黒江哲郎事務次官や岡部俊哉陸上幕僚長らが関与したと認定。一方、稲田朋美防衛相への報告については「日報データの存在について(幹部から)何らかの発言があった可能性は否定できない」と指摘するにとどめ、稲田氏の関与の有無はあいまいな部分が残り、全容解明には程遠い内容となった。
監察本部によると、稲田氏や陸自幹部らが出席した2月13日と15日の打ち合わせの際、陸自で日報の電子データが残っているとの報告があったという証言は複数あったが、否定する証言も複数あり「一致しなかった」と結論づけた。稲田氏が非公表の方針を決定したり、了承したりしたという証言はなく、そうした事実は「なかった」と認定した。
一方、同15日と16日には黒江氏や岡部氏らが別の打ち合わせで、陸自内の複数の端末に保管されていた日報について協議。黒江氏は開示対象となる行政文書として管理されているかが「不明確」で、統合幕僚監部で見つかった日報がすでに公表されていたことから、陸自の日報を非公表とする方針を決めたとしている。
また、日報の開示請求が最初にあったのは昨年7月だったが、派遣部隊の上部組織である陸自中央即応集団の堀切光彦副司令官(当時)が開示文書から外すよう指導。3カ月後に2度目の請求があった際も前例が踏襲され、同12月2日に「廃棄した」として不開示決定がされた。
その後、陸自の指揮システムの掲示板に電子データが残っていることが分かったが、牛嶋築(きづき)・陸幕運用支援・情報部長の指導で同13日に削除された。ただ、掲示板からダウンロードされたデータも複数の端末で見つかり、今年1月27日に牛嶋部長から統幕の辰己昌良総括官にも報告されたが、辰己氏は同日、黒江氏と協議の上、「公表にたえられる代物か不明」として、稲田氏には昨年12月26日に統幕内で日報が見つかったことしか報告しなかった。辰己氏が陸自側に「今さら言えない」と非公表を指示したとの報道には「事実が確認できなかった」とした。
特別防衛監察は3月17日に始まり、2048人へのアンケートと106人への事情聴取が実施された。調査の結果、開示請求のあった昨年7月の日報を陸自や統幕、内局の計194人が保有した経験があり、今年3月末時点で42人が保有を続けていた実態も判明。監察結果は「防衛省・自衛隊の情報公開や文書管理のあり方に、多大な疑念を生じさせた」と結論づけた。【前谷宏、金森崇之】