◇論破された弁明【全文】 「貴乃花親方の 責任について」 ~理事解任案の 根拠~ 元日馬富士の 傷害事件への 対応が遅れたとして、 日本相撲協会は28日の 臨時理事会で貴乃花親方の 理事職を解く方針を決めた。 来年1月4日の 臨時理事会に諮って正式に決まる。 発端となった事件を忘れそ
◇論破された弁明
【全文】「貴乃花親方の責任について」~理事解任案の根拠~
元日馬富士の傷害事件への対応が遅れたとして、日本相撲協会は28日の臨時理事会で貴乃花親方の理事職を解く方針を決めた。来年1月4日の臨時理事会に諮って正式に決まる。発端となった事件を忘れそうな協会と貴乃花親方の泥沼の衝突は、簡単に収束しそうもない。 理事会後、八角理事長(元横綱北勝海)らとともに記者会見した危機管理委員会の高野利雄委員長(元名古屋高検検事)が解任理由を説明。25日の事情聴取で貴乃花親方が述べた弁明を論破し、「被害者の立場であることを考慮しても責任は重い」と結論付けた。 例えば、協会への報告が遅れた理由の一つを、一般人を巻き込んでいる可能性も考えたとした点は、それならなおさら第一報すべきだったと指摘。親方自身も貴ノ岩から詳しい話を聞けていない状態で鳥取県警に相談していたことは、「師匠が弟子に問いただせないという関係は本来あり得ない」と切り捨てた。日頃、貴乃花親方が「師弟関係は絶対」と言っているのを逆手に取ったように見える。 「別の部屋の力士であったら報告したかもしれないが、自分の弟子のことだから調べようと」思って遅れた、協会への報告は県警に依頼したので自分がしなくともよいと思っていた、との弁明もあったというが、危機管理委は「到底納得のいく説明とはいえない」と退けた。危機管理委の事情聴取を延ばし続けた理由にも合理性がないとした。幹部からは「よその力士なら報告したとは、弟子思いというより公私混同だろう」との声も聞かれる。 元日馬富士の師匠、伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は理事辞任を申し出て受理された。貴乃花親方が解任されれば、同じ役員待遇への降格となる。被害者の師匠と加害者の師匠が同じ扱いかとの疑問も出るが、高野委員長は「理事・巡業部長として職務に従って仕事をしたかどうか。伊勢ケ浜親方は自分で責任を感じて辞任された。結果は同じかもしれないが、いきさつ、認定事実が違うので矛盾はない」と述べた。伊勢ケ浜親方は監督責任、貴乃花親方は理事・巡業部長としての本人責任という違いもある。 ◇理事長の指導力不足も 結局、貴乃花親方が抵抗した理由は、今も明確になっていない。知人と称する人たちがテレビなどで親方の言い分を語ったり、週刊誌に「貴乃花親方激白」などの記事が載ったりしたことについても、「(知人に)語ったことも語らせたこともない。週刊誌の取材も受けていない」と答えたという。 例えば発覚当初、貴ノ岩が師匠にも詳しく言えなかったのは、白鵬や元日馬富士の報復を恐れたからだと考えられ、モンゴル力士たちの日頃の行動も根っこにあるとの見方もある。それらは警察の捜査の範囲外で、何らかの方法でつまびらかにしなければ、貴乃花親方ファンでさえ真実を知りようがない。現時点までの弁明が全てなら、少なくとも表向きは、脇の甘い抵抗が元検事らに次々と論破された形で終わる。 加えて相撲協会はこの日、昨年1月に顧問契約を解除した人物に利益相反行為があったなどとして、総額約1憶6500万円の損害賠償請求訴訟を起こしたと発表した。協会内では元顧問と貴乃花親方が近いと思われており、協会が理事解任案に合わせて無言の圧力を掛けたことは明らかだ。 ただ、貴乃花親方の抵抗によって、八角理事長の指導力不足も印象付けられた。理事・巡業部長として果たすべきだった義務が当たり前のことであればあるほど、2カ月近くもの間、理事長が一理事に当然の義務を履行させられなかったことを意味するからだ。白鵬に対する指導力も併せて、初場所後の役員改選で理事長再選に向けたマイナス材料になりそうだ。 貴乃花親方は解任されても、理事候補選に立候補できる。この日、八角事長が自ら見解を明らかにした。貴乃花親方が解任を不服として法的措置に出るのを防ぐためか、協会内の貴乃花支持者への配慮を見せつつ選挙で踏み絵を迫るためか。当選しても、現行制度では評議員会の同意がなければ理事に就任できず、同意されない可能性を貴乃花親方がどう考えるか。暴力根絶の本題も土俵もかすむ騒動は、年が明けても続きそうだ。(時事ドットコム編集部)(2017/12/28-21:53)
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