元自民党総裁で衆院議長を務めた河野洋平氏(81)が西日本新聞の インタビューに応じた。 「権力の 頂点にいる人から改憲の …
元自民党総裁で衆院議長を務めた河野洋平氏(81)が西日本新聞のインタビューに応じた。「権力の頂点にいる人から改憲の号令がかかり、指示が飛ぶのはおかしい」。憲法9条に自衛隊の存在を明記する改正を目指す安倍晋三首相(党総裁)を批判した。保守きってのハト派の河野氏は、改憲論議に警鐘を鳴らした上で、「安倍1強」にも強い危機感を示した。
-安倍首相は年初から改憲への強い意欲を示している。
「とにかく変えたいということだけは、はっきり言う。ではどう変わるのかというと、自衛隊を明記しても内容は変わらないと否定する。明らかに自己矛盾だ。自衛隊を持つこと、必要最低限の自衛力を持つことは、国際的にも認められた普遍的な認識だ。安倍さんはその認識を無視し、北朝鮮の脅威まで改憲の根拠にして、危ない方向に進んでいる」
「憲法には権力者の権利行使に制限を付ける意味がある。総理と総裁を使い分けて、国民から改憲を望む声は大きく聞こえてこないのに、改憲を叫ぶのはおかしい。9条はわれわれの決意であり、覚悟であり、理想だ。その理想のために努力することこそが政治家の使命だ」
-秋には総裁選がある。
「すんなり『安倍3選』とはいかないのでは。世論調査からは不信感に加え、飽きがみてとれる。(在職日数戦後トップの)佐藤栄作のように、佐藤以外なら誰でもいいという動きがあるかもしれない。ただかつての五大派閥の『三角大福中』といった後継者がいる状況ではないのが残念だ」
「党内の批判勢力がだらしないからだ。小選挙区制度によって、党の公約に忠実でないと公認されず、純化路線が進んだが、昔の自民党は幅広い主張、意見があった。(かつて所属した)宏池会をはじめ、ハト派の復権に期待したいが、リーダーが安倍さんの主張に寄っては意味がない。政治的エネルギーを憲法改正に使うのではなく、財政再建に取り組むなど、確たる信念を示してほしい」
-安倍外交をどうみるか。
「トランプ米大統領は不透明だが、米国べったりでは、距離を置く欧州から日本も同じとみられてしまう。ロシアは既に批判的で、中国も信用していない。日本は難しい立場にある。日中関係は改善と言うが、果たして腹の底から信頼できる相手とみられているのか。日韓はもっと複雑だ」
-息子の河野太郎外相の評価は。
「まだまだ種まき。芽が出て実るかが問題で、点数を付ける段階ではない」
=2018/02/12付 西日本新聞朝刊=