中立性、 世界有数の 経済大国で治安も良好 【バンコク西脇真一】 米国の トランプ大統領と北朝鮮の 金正恩(キム・ ジョンウン)朝鮮労働党委員長による史上初の 米朝首脳会談の 舞台にシンガポールが選ばれた理由について、 東南アジアの 事情に詳しい外交関係者は「米朝双方が条件を突きつけ合い、 消去法で残ったの がシンガポー
【バンコク西脇真一】米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による史上初の米朝首脳会談の舞台にシンガポールが選ばれた理由について、東南アジアの事情に詳しい外交関係者は「米朝双方が条件を突きつけ合い、消去法で残ったのがシンガポールではないか」と分析する。
首脳会談開催が決まった後、両国間では開催地として、シンガポールのほか(1)ワシントンや平壌(2)モンゴルの首都ウランバートル(3)南北軍事境界線にある板門店などを念頭に調整を進めてきた。ただ、相手の首都に訪れることになれば「譲歩した」と受け止められるおそれがある▽ウランバートルは設備や警備面で不安が残る▽板門店なら韓国の仲介が過度に強調される--などの要因から調整が難航してきた。
シンガポールは独立翌年の1966年に米国と、75年に北朝鮮とそれぞれ外交関係を結んだ。米朝両国の大使館もあり中立性には問題ない。これまでもシンガポールは米朝の公式、非公式の協議の場となってきた。2008年12月、北朝鮮核問題を巡る6カ国協議の米国と北朝鮮の首席代表が米国大使館で会談。15年1月には、北朝鮮の外務次官と米国の元高官が非公式に接触したこともある。
シンガポールは世界有数の経済大国で治安も良い。警察の捜査力などの面でも信頼されており、米朝両首脳を警護するための問題は少ないとみられる。
シンガポールと平壌は約4800キロ離れている。金委員長が使う専用機を含め北朝鮮保有の旅客機では(航続距離や安全性の面から欧米など遠隔地への移動には不安が残るとみられる。14年11月に崔竜海(チェ・リョンヘ)朝鮮労働党書記(当時)が航空機でモスクワを往復した際、機体トラブルが起きた例もあったためだ。
香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)によると、金委員長が今月7~8日に中国遼寧省大連を訪問した際に利用した専用機は、旧ソ連が開発したイリューシン(IL)62M旅客機をベースとした機体。同紙は航続距離を1万キロと紹介している。大連への渡航で使って安全性に問題がないと判断した可能性がある。
外交関係者は「米国としては、警備態勢や専用機の問題をクリアし、北朝鮮側が安心して出て来られる場所の中から選んだということではないか」と話している。
シンガポール外務省のホームページによると、北朝鮮大使館は、大使を含め外交官は4人と小規模だ。一方、シンガポール側は北朝鮮に大使館を置いておらず、緊急時に保護できないとして、国民に不必要な渡航は避けるよう呼びかけている。