■自民党総裁選と内閣改造を受けた臨時国会は、 1日の 予算委員会から与野党の 攻防が本格化します。 安倍晋三首相の 説明や野党の 追及をタイムラインで追います。 ■石破派の 4人、 論客ぞろいだが出番なし(寸評=岡本智…
衆院予算委で、自民党の岸田文雄政調会長の質問に答弁する安倍晋三首相=2018年11月1日午前9時47分、岩下毅撮影
9月の自民党総裁選で善戦したものの敗北し、党の総務会に主要派閥で唯一、一人もメンバーを出せなかった石破派。党の要職から派閥議員が外されていますが、衆院予算委員会の名簿には31人の自民委員のうち4人が名を連ねました。
石破茂氏本人に加え、ベテランの山本有二元農水相、伊藤達也元金融相、若手の石崎徹氏が、首相と質問者のやりとりを見守っています。論客ぞろいですが、この日の質問者には選ばれていません。内閣改造後から石破派を担当する私にとっては歯がゆく、首相に遠慮しない的確な質問でいずれ論戦を盛り上げてほしいものです。
衆院予算委が開かれる第1委員室に入る自民党の石破茂氏=2018年11月1日午前8時50分、岩下毅撮影
1日の衆院予算委は全閣僚の出席が求められているが、午前10時過ぎから、岩屋毅防衛相が中座する姿が目立っている。同省は1日朝、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先とする名護市辺野古での工事を再開したばかり。対応に当たっているとみられる。
沖縄県は8月、故・翁長雄志前知事の方針に従って辺野古の埋め立て承認を撤回。10月31日、国交相が防衛省の申し立てに従って承認撤回の効力を停止した。法的には工事が再開できる状況となったが、同日には野党7党・会派が岩屋氏に対し、工事再開前に県と協議するよう要請した。
効力停止からわずか1日での工事再開が、県や野党の批判を招くのは必至だ。
社民党の吉川元・幹事長は国会内で記者会見し、「今日は午後から野党の質問。片山さつき地方創生相はいくつもいくつも疑惑が出てきたし、辺野古(への米軍普天間飛行場の移設)の問題もある。野党が一致結束をして徹底的に政権を追及したい」と語った。
10月31日までの各党の代表質問に対する安倍晋三首相の答弁について、吉川氏は「自分の都合の悪いことは一切触れなかった」と批判。「首相は『丁寧な説明』と言いながら、加計(かけ)問題にしろ森友問題にしろ、まったく何の説明もしていない。予算委員会はやりとりができるので、やりとりの中で問題を明らかにしたい」と述べた。
質問に対して1回答弁すれば済む本会議の代表質問とは違って、質問回数に制限がなく丁々発止の攻防が繰り広げられる予算委員会は国会論戦の主戦場です。委員長は「行司役」。そのかじ取り一つで、論戦の魅力は大きく変わってきます。
2010年から約1年間、自民党の国会対策委員会担当だった私にとっての名委員長は、民主党の故・中井洽(ひろし)氏。当時の菅直人首相ら閣僚の答弁が不十分だと思えば「聞いたことに答えなさい」といさめる。意図が不明確な質問に対して「君は何を聞きたいんだ」と諭す――。与野党問わず平等に差配する姿に、ベテランのすごみを感じたものです。
審議時間などをめぐって与野党の折り合いがつかない時には、自民党の筆頭理事だった武部勤氏がキャラを生かして与党側をしかりつける「見せ場」をつくるのがうまかったのを覚えています。野田聖子さんはどんな「落としどころ」の探り方を見せるのでしょう。
衆院予算委に臨む野田聖子委員長(右端)。中央は安倍晋三首相=2018年11月1日午前8時59分、岩下毅撮影
自民・橋本岳氏が2人目の質問者。西日本豪雨での避難所の環境整備を取り上げ、「雑魚寝」をやめて「段ボールベッド」を導入する意義を訴えた。「避難所の景色を変えれば災害関連死や二次被害を防ぐことができる。それをやるのはいつですか、今でしょう」
3人目の自民・堀井学氏も、北海道胆振(いぶり)東部地震への対応をただした。安倍晋三首相に「復旧復興への決意をお願いします」と尋ね、首相は「政府一丸となって全力を挙げる」と応じた。
与党議員の質問はどうしても、地元の話題や業界の要望を取り上げて政府の「決意」を求めることが多く、緊張感が薄れがち。地元に立脚しつつ、どうすれば意義あるやりとりになるか、腕の見せどころだ。
衆院予算委の開会中、飲み物を口にする安倍晋三首相=2018年11月1日午前10時8分、岩下毅撮影
続いて自民・岸田氏は、韓国大法院(最高裁)が元徴用工への賠償を日本企業に命じた問題を取り上げ、「日韓関係、どのようにマネージしていくのか」と首相に問うた。
首相は「今般の判決は国際法に照らせばあり得ない判断」と厳しく批判。一方で「日韓間の困難な諸課題をマネージしていくためには、日本側のみならず韓国側の尽力も必要不可欠」と指摘し、「判決に対する韓国政府の前向きな対応を強く期待している」と踏み込んだ。
政府はこれまで、西村康稔官房副長官が31日の記者会見で「韓国政府がどのような対応をするのか、しっかりと見極めたい」と述べるにとどめていた。
1日の衆院予算委員会では、野田聖子氏が委員長としての初仕事に挑んでいます。
野田氏は1年2カ月務めた総務相を10月に退任したばかり。内閣改造で女性閣僚が1人にとどまったため、政権の掲げる「女性活躍」を国会でアピールするねらいで起用されました。午前9時に始まった予算委で、委員長席から「内閣総理大臣、安倍晋三さん」と指名するなど、落ち着いた出だしに見えます。
野田氏は朝日新聞のインタビューで「予算委は与野党の主戦場と言われるが、国民のための委員会でもある。国民目線からそれることがあれば、速やかに軌道修正するのが私の役割」と意気込んでいました。質問に真正面から答えようとしない姿勢への批判が続く安倍首相ら閣僚の答弁をうまく差配できるでしょうか。
衆院予算委に臨む野田聖子委員長=2018年11月1日午前8時59分、岩下毅撮影
衆院予算委で質問する自民党の岸田文雄政調会長=2018年11月1日午前9時5分、岩下毅撮影
自民・岸田氏が、外国人労働者の受け入れ拡大に論点を移した。
政府は「移民政策」について「国民の人口に比して一定程度の規模の外国人と家族を期限を設けず受け入れ、国家を維持していく政策」と定義し、今回は違うと説明している。岸田氏は「もう少し国民に分かりやすい説明を」と注文した上で、こんな提案をした。
「例えばこういう聞き方ならどうか。政府は移民政策と違うと言う。では移民政策を導入した場合と、政府の取り組みを導入した場合、10年後、それぞれ日本の国はどう変わるか。これにお答え頂くことで、移民政策との違いを説明することはできないか」
ところが、答弁した山下貴司法相は、例の「定義」を読み上げた上で、「将来にわたって適切な制度運用が期待できる」と述べるばかりで、与党に対しても「ゼロ回答」。ヤジが飛ぶ中、岸田氏は「ぜひ国民に分かりやすい説明をこれからも心がけて頂きたい」と苦笑いするしかなかった。
衆院予算委で、自民党の岸田文雄政調会長の質問に答弁する山下貴司法相。右下は安倍晋三首相=2018年11月1日午前9時35分、岩下毅撮影
「今年も本当に多くの大型の災害が連続して発生しました」。トップバッターの自民党・岸田文雄政調会長はこう質問を切り出した。午前中は自民、公明両党の質問時間となっており、自民からは岸田氏(広島1区)、橋本岳氏(岡山4区)、堀井学氏(北海道9区)、坂本哲志氏(熊本3区)の4人が順に登板する。
2014年の広島土砂災害、一昨年の熊本地震、今年の西日本豪雨と北海道胆振(いぶり)東部地震。4氏はそろって、最近の自然災害で被災した道県から選出された議員たちだ。
今年7月の西日本豪雨では、災害が迫る中で首相や岸田氏を含む自民議員が、赤坂の議員宿舎で「赤坂自民亭」と称して酒宴を開いていたことが批判を受けた。災害対策を前面に出したラインナップとすることで、負のイメージを改善する狙いがありそうだ。
衆院予算委の開会前、言葉を交わす自民党の岸田文雄政調会長(左)と安倍晋三首相(右)=2018年11月1日午前8時52分、岩下毅撮影
衆院第1委員室で予算委員会が始まった。10月24日に召集された臨時国会で、初めての開催。安倍晋三首相ら全閣僚が出席し、与野党が質疑する。
臨時国会は11月1日から衆院予算委員会での論戦が始まる。野党は外国人労働者の受け入れ拡大や、沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設、「閣僚の資質」問題などで安倍晋三首相や片山さつき地方創生相への追及を強める構えだ。
10月31日まで3日間行われた衆参の代表質問は、委員会のような「一問一答」が行われない。野党の追及を首相が「言いっ放し」でかわす場面が相次いだ。
31日、外国人労働者の受け入れ拡大について、国民民主党の大塚耕平代表代行から「移民政策ではないと強調するのはなぜか」と問われた首相は「広くご理解頂けるよう取り組む」と答えるのみ。野党議員に「答弁漏れ」を指摘されて再登壇しても、「様々な意見がある中で大きな政策転換を行うべきではないと考えているから」との答弁だった。
野党6党・会派の国会対策委員長は31日、予算委で連携して政権追及を強めることを確認。立憲民主党の辻元清美国対委員長は「代表質問のように『ごまかし答弁』で終わり、というわけにはいかない」と記者団に語った。
野党側は外国人労働者の問題のほか、政府が進める辺野古移設について「沖縄の民意無視」、首相が意欲を見せる改憲には「自衛権の範囲を大幅に拡大する」と批判を強める。消費増税や森友・加計(かけ)学園問題でも首相を追及する構えだ。
新任閣僚の中では国税庁への口利き疑惑を報じられた片山氏に照準を定める。31日の参院本会議で片山氏が「記事には事実と異なる記述がある。説明責任を果たしたい」と答弁すると、野党議員からは本会議後「だったら予算委でしっかり説明してもらおう」との声が出た。(斉藤太郎)
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