世界各国の科学者でつくる国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」は、気候変動の自然や社会への影響に関する報告書を8年ぶりにまとめ、公表しました。食料の供給や健康など広範囲にわたって悪影響が広がっているうえ、気候変動に適応していくことも限界が近づいているとして警鐘を鳴らしています。
IPCCは、今月14日からオンラインの会合を開いて、最新の研究結果に基づく議論を行い、気候変動の自然や社会への影響に関する報告書を8年ぶりにまとめ、28日公表しました。
報告書では「人類が引き起 …
世界各国の科学者でつくる国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」は、気候変動の自然や社会への影響に関する報告書を8年ぶりにまとめ、公表しました。食料の供給や健康など広範囲にわたって悪影響が広がっているうえ、気候変動に適応していくことも限界が近づいているとして警鐘を鳴らしています。 IPCCは、今月14日からオンラインの会合を開いて、最新の研究結果に基づく議論を行い、気候変動の自然や社会への影響に関する報告書を8年ぶりにまとめ、28日公表しました。 報告書では「人類が引き起こした気候変動は、自然と人間に対して広範囲にわたる悪影響と、それに関連した損失と損害を引き起こしている」と結論づけ、前回の「気候の変化が自然や人間に影響を引き起こしている」という表現から大きく踏み込みました。 そのうえで、水の供給、農業や漁業、健康、自然災害といった幅広い分野で、さまざまな影響が広がり特に悪影響が増大していると指摘しています。 そして、30億人以上の人たちが気候変動に対応できない、ぜい弱な状況で暮らしていて、平均気温の上昇を1.5度に抑える対策によって損失を大幅に低減できるものの、完全になくすことはできないとも記しています。 一方、気候変動に適応する取り組みによってリスクを軽減し、農業の生産性の向上や健康への効果が期待できるとしていますが、経済的な格差によって地域で取り組みに差が生まれているほか、温暖化の進行に伴って適応が限界に達するところが出てくる可能性が高いとしています。 こうした内容を踏まえて、IPCCは「1.5度の温暖化によって、世界は今後20年間、さまざまな危機に直面する。一時的にでも1.5度を超えると、さらに深刻な影響が広がり、一部は不可逆的なものとなる」と警鐘を鳴らしています。 去年開かれた気候変動対策の国連の会議「COP26」では、気温上昇を1.5度に抑えるために各国が温室効果ガスの削減目標を再検討することや、気候変動の適応に向けた議論を世界全体で進めていくことなどが合意されていて、各国や世界が今回の報告書を受けてどう行動するかがいっそう問われることになります。 具体的な影響の予測は IPCCの報告書では、水や食料の供給、健康や自然災害などの分野で、気候変動の影響が広がると予測されています。 中長期的には現在、観測されているより数倍大きい影響が引き起こされるおそれがあり、そのリスクは今後の気候変動対策に強く依存するとしています。 具体的には、世界の平均気温が2度以上上昇した場合、食料の安全保障に深刻な影響があり、特にアフリカや南アジア、中南米などを中心に栄養失調などが広がるおそれがあるとしているほか、洪水による被害は気温が2度上昇すると、1.5度の場合と比べて1.4倍から2倍に増加する可能性があるなどと予測しています。 さらに、命や健康に関わる影響が広がることも指摘し、気温上昇の度合いに関わらず虫や水などを媒介した感染症のリスクが高まり、中にはデング熱は、アジアやヨーロッパなどの現在より広い地域で、今世紀末までに数十億人もの人たちをリスクにさらすおそれがあるとしています。 IPCCの報告書とは 国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」は1988年、WMO=世界気象機関とUNEP=国連環境計画によって設立されました。 各国の政府から推薦された研究者が協力し、最新の研究成果をもとに気候変動の現状や今後の見通し、自然や社会などへの影響、温室効果ガスの排出を削減する対策について、個別の報告書と全体の報告書を数年ごとに発表しています。 現在は第6次評価報告書がそれぞれ順次取りまとめられていて、今回公表されたのは、自然や社会などへの影響に関する部分です。 第1次評価報告書は1990年に発表され、1992年に採択された国連の「気候変動枠組条約」の、重要な根拠のひとつとなりました。 第5次評価報告書は、2013年から翌年にかけて発表され、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満に保つとともに、1.