増収増益、店舗数も急拡大京都に本社を置く株式会社魁力屋が運営するラーメンチェーン「京都北白川ラーメン魁力屋」(以下、「魁力屋」)が絶好調だ。同社が11月14日に発表した24年12月期第3四半期決算によれば、売
増収増益、店舗数も急拡大
京都に本社を置く株式会社魁力屋が運営するラーメンチェーン「京都北白川ラーメン魁力屋」(以下、「魁力屋」)が絶好調だ。
同社が 発表した 期第3四半期決算によれば、売上高は前年同期比16.3%増の90億2600万円、営業利益は16.7%増の6億8400万円、四半期純利益は5.7%増の4億800万円と、増収増益を記録した。
また店舗数に関しても、前事業年度末に比べて直営店6店舗を含む10店舗が増加。累計では155店舗となり、全国でその数を着実に増やしている。
「魁力屋」といえば、京都ラーメンのひとつ「京都背脂醤油ラーメン」を提供することで知られる。醤油味の鶏ガラスープに背脂、麺は低加水中細麺を用い、〈屋台ラーメンのように素朴でありながら、あっさりしているけどコクと深みのあるこだわりの背油醤油ラーメン〉を標榜している。
京都ほか関西ではすっかり定着している背脂醤油ラーメンだが、驚くべき点は「魁力屋」が関東以北でもチェーン展開を領域を広げていることだ。直近 以降に新規オープンした店舗を見ても、東京都町田市、東京都府中市、福島県いわき市と、関東圏のみならず東北にまで浸透しつつある。
「魁力屋」がここまで勢力を拡大している理由とはいったい何なのか。
深刻な「ラーメン不況」の中で
まず前提として、ラーメン業界を取り巻く環境はきわめて厳しい状況にある。信用調査会社大手・東京商工リサーチによれば、24年1〜 のラーメン店の倒産は47件と、前年同期比42.4%増、集計開始以降年間最多のハイペースを辿っている。
その主たる理由は物価高や人手不足などの深刻な問題だ。もちろん他の飲食業界もそうした環境にさらされているが、ことラーメン業界が苦しんでいるのは、くわえて「1000円の壁」という問題が立ちはだかっている。
飲食店支援専門の中小企業診断士である中村コンサルタント事務所代表の中村清志氏が解説する。
「ラーメン店にとって、スープづくりには欠かせない豚肉や鶏肉・ガラなど食材の高騰、エネルギーコストの負担は非常に大きい。とりわけスープづくりのためにガスをよく使用するので、ガス料金の値上がりは相当に苦しいと思います。
かといってラーメンの価格は『1000円の壁』と言われている通り、安易に値上げできるものではありません。いかに1000円以下に抑えながら生き残るかに腐心しているラーメン店がほとんどなのです」
そんな厳しい状況下でも店舗を拡大し、増収増益を達成した「魁力屋」。その秘訣について、中村氏は3つの要素を挙げる。
「ネギとたくあんを食べに行く店」
まず1つ目が、独自のメニュー構成による「オンリーワン戦略」の展開だ。
「『魁力屋』が提供する京都背脂醤油ラーメン自体は、良く言えば幅広いお客さんに受け入れられる、悪く言えばずば抜けた魅力はないラーメンです。しかし、個性が強すぎるラーメンというのは、どうしても市場が限定されてしまうものです。
その点、『魁力屋』が際立ったのが、ベースとなるラーメンに対して、注文時に麺の細さと固さ・背脂の量・ネギの量を指定できるようにする、いわば『ラーメンのカスタマイズ化』です。
若い人なら背脂やネギをどっさり盛り、一方で高齢の人なら背脂抜きを注文する。その独自のメニュー構成によって、差別化が図れ、結果的にファンとなる客が増えたのです」
トッピングだけではない。たとえば無料で「たくあん食べ放題」というのも、「魁力屋」ファンにとっては魅力の一つ。ラーメンの到着を待つ間に、ビール片手につまむもよし。一緒に注文したライスと一緒に食べるもよし。ファンの中には「『魁力屋はネギとたくあんを食べに行く店」と豪語する人もいるほどだ。
また、京都発祥のチェーン店らしく、焼きめしや唐揚げ、餃子などサイドメニューが充実しているのも「魁力屋」の特徴の一つ。中村氏によれば、カスタマイズできるラーメンで客を吸引しつつ、比較的粗利益が高いサイドメニューで利益を稼ぐ。このスタイルも安定した経営につながる要素だという。
強固なつながりを持つ「のれん分け」
2つ目は多様な店舗タイプを有している点だ。主軸を担っているのは郊外のロードサイド店。こちらは10台以上の駐車スペースを確保し、カウンター13席とテーブル5卓・30席の合計43席を基本とした大型店舗となっている。
これ以外にも商業施設内のフードコート店、駅前ビルインなど様々。また最近では、コンビニの居抜きやラーメン屋の撤退物件を活用するなど、柔軟かつ効果的に出店しているのも「魁力屋」の強みと言える。
そして3つ目が多面的な運営形態だ。前出の中村氏はこう語る。
「よく『魁力屋』のラーメンは、同じくチェーンの『来来亭』に似ていると言う人がいますが、それもそのはず、『来来亭』から独立して生まれたのが『魁力屋』。両チェーンに共通するのは社員独立制度、いわゆる『のれん分け』制度が充実しているという点です。
そのため『魁力屋』は、FC加盟店や独立店による出店体制や本部と店舗のネットワークが、他チェーンと比べてきわめて強固なものになっています。本部が掲げた経営目的と目標を、利益の源泉である店舗がしっかりと理解した上で、愚直なまでに実行している。これこそが、堅実な成長を生む原動力というわけです」
に創業し、昨年 に東証スタンダード市場へ上場、そして来年で20周年の節目を迎える「魁力屋」。ラーメン業界の勢力地図は、今まさに塗り替えられつつあるのかもしれない。