文部科学省が天下りを斡旋(あっせん)した国家公務員法違反が発覚した。 元局長が自らの監督下にあった私立大の教授に就く。誰もが首をひねる再就職が組織的に行われていたとすれば、天下り規制強化の流れに逆行するものだ。官僚のモラルの欠如にあきれる。 教育をつかさどる官庁として恥を知るべきだ。背景を含めてさらに調査し、再発防止を図ってもらいたい。 内閣府の再就職等監視委員会が調査した。監視委は規制強化の一環で平成20年に設置された。違反行為を調べ、懲戒処分を勧告する権限がある。発覚後、直ちに文科省事務次官の引責に発展したのは、深刻な事態といえる。 判明しているのは27年、当時の高等教育局長が退任2カ月後、早稲田大の教授に再就職した問題だ。文科省の人事課が斡旋に関与した疑いがある。 国家公務員法は、利害関係がある民間企業や団体への天下りを規制している。自分の求職活動のほか、省庁OBの職歴情報を企業側に提供する斡旋行為などが禁止されている。 まさか、文科省と私大は利害関係にはないと思ってはいまい。国から多額の助成金が支払われている。早稲田大への年間経常費補助は90億円規模だ。文科省は学部新増設などの許認可権限を握っている。緊密すぎる関係から「人事異動」の感覚だったのか。 官僚組織は、同期が次官に就くと、定年前の局長らが関連財団などに天下る慣行が続き、批判をあびてきた。そこに厳しい目が注がれ、天下り先は減ると思われた。たくさんある大学なら目立たないとでも考えたか。「役人天国」に使われては大学の名も泣く。 文科省以外の官僚出身者を含め、大学の職に就く例は少なくない。個人の専門性を生かすにも透明性は欠かせない。 第1次安倍晋三内閣時代、官製談合などを排する天下り規制強化とともに、背景にある省庁縦割り主義や年功序列など一体で見直す方針が示されたはずだ。その改善が伴わなければ、天下り根絶は図れないだろう。 その後も各省庁で天下り違反が相次ぐ。議席数が多くても、官僚の身勝手を許す政権の指導性の欠如を示す。「文科省はやり方が下手だった」。今回の問題をそんな揶揄(やゆ)に終わらせてはならない。