トランプ氏の就任演説は、大統領選時に訴えた「エスタブリッシュメント(既得権層)批判」や「米国第一主義」、スローガンの「Make America Great Again(再び米国を偉大にする)」などの言葉がすべて詰め込まれた「トランプ節」全開となった。 まず「首都ワシントンから権力を移し、国民の皆さんに戻す」と語りかけ、既得権層の批判から入った。「既得権層は己の身は守ったが、市民は守らなかった」と指摘した上で、「2017年1月20日は、国民が再びこの国の支配者となった日として記憶される」と語った。その上で、「米国での殺戮(さつりく)は、ここで今すぐ終わりとなる」と述べ、政治経験のない自分こそが、既存政治を打破し、国民の側に立つ政権運営を行えることを訴えた。 続いてトランプ氏は「(米国は)国境を守ろうとせずに、他国の国境を防衛してきた。米国のインフラが荒廃し、劣化する一方で、何兆ドルも海外につぎ込んできた」などと強調。「この日から、『米国第一』のみがビジョンになる」と宣言した。 その上で「貿易、税金、移民、そして外交問題に関するすべての決定は、米国の労働者や米国民の利益になるものにする」とした。 外交・安全保障に関しては「従来の同盟を強化し、新しい同盟を結ぶ」と述べ、「文明化した世界を結束させて、過激なイスラムのテロリズムに立ち向かい、地球から完全に絶滅させる」との表現で、「イスラム国」(IS)掃討を進める考えを示した。 また、選挙戦でトランプ氏が不法移民排斥やイスラム教徒入国禁止などを訴えたことから広がった米社会の「分断」については、「いつも結束を追求しなければならない。米国は団結すれば、誰にも止められない国になる」と融和を呼びかけた。 そして演説の最後を「再び米国を強くする。再び米国を豊かにする。再び米国を誇り高い国にする。再び米国を安全にする。ともに、再び米国を偉大な国にする」と締めくくった。(ワシントン=佐藤武嗣)