宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3日午後2時3分、 電柱サイズの ロケット「SS―520」 5号機を内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)から打ち上げた。 東京大学の 超小型衛星を予定の 軌道に投入し、 打ち上げは成
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3日午後2時3分、電柱サイズのロケット「SS―520」5号機を内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)から打ち上げた。東京大学の超小型衛星を予定の軌道に投入し、打ち上げは成功した。ロケットは キヤノン電子 が参画し、部品に民生品を使いコストを抑えた。今回の成功で宇宙関連産業の裾野拡大に弾みがつく。 時折強い風が吹く中、ロケットは発射台から飛び出し、一直線に青空に吸い込まれた。大型ロケットほどではないが轟音(ごうおん)も響いた。 ミニロケットは既存の宇宙観測ロケットを改良した。電柱サイズで衛星を投入できるロケットとしては世界最小級だ。打ち上げ費用は大型ロケットより大幅に安い約5億円。失敗した2017年1月の打ち上げに続く2回目の挑戦だった。記者会見したJAXAの羽生宏人准教授は「日本の民生部品を宇宙に転用できると示せた」と話した。 ロケットの部品に携帯電話や家電に使われる半導体などの民生品を使いコストを抑えた。キヤノン電子は姿勢を制御する装置を担った。 今回の打ち上げは、民間の宇宙ビジネス拡大の契機になる。重さ数百キログラム以下の小型衛星は安く短期間に開発でき、企業や大学にも手が届く。ミニロケットは小型衛星の打ち上げに特化しており、低コストで頻繁に打ち上げることができる。 小型衛星市場は今後拡大が見込まれる。打ち上げ需要は23年に460基と16年の4.6倍に膨らむとの調査もある。米国ではベンチャー企業のロケットラボが18年1月に小型ロケットの打ち上げに成功した。国内でもインターステラテクノロジズ(北海道大樹町)が17年7月に小型ロケットの打ち上げを試みた。 超小型衛星を大量に打ち上げて地球を取り囲み電波をやり取りすれば、世界中どこでもインターネットが使える。地表を網羅し観測したデータを人工知能(AI)で解析すれば自動車や船、農業、金融などで高度なサービスが展開でき、自然災害の発生時にも役立つ。 既存のロケットは大きすぎるため他の小型衛星と相乗りするケースも多く、自分の都合で打ち上げ時期や軌道を選べない不自由さがあった。 キヤノン電子はIHIエアロスペース、 清水建設 、日本政策投資銀行と設立した共同出資会社を通じ、ロケット打ち上げサービスの事業化を目指している。民営のロケット発射場も和歌山県串本町に建設する方針で、21年の完成が目標だ。