離婚後も「年間100日、子どもと会えるようにする」と母親に提案した父親と、「月1回は父親が子どもに会えるようにする」と主張した母親。どちらを親権者にするかが争われた訴訟で、東京高裁(菊池洋一裁判長)は26日、母親を選んだ。子どもと同居している実態を重視した。こうした争いは増えており、面会をどう実現していくのかなど課題も多い。 訴えたのは、埼玉県に住む40代の父親。高裁判決によると、40代の母親は2010年に長女を連れて実家に帰り、別居。父親は数回は長女と面会できたが、その後に夫婦間の対立が深まって面会できなくなった。 昨年3月の一審・千葉家裁松戸支部判決は、離れて暮らす親と子どもとの「面会交流」に積極的な父親に親権を認めた。対立する母親に協力的な提案をしたことを理由に、親権者としてふさわしいと判断したのは異例のことで注目された。しかし、この日の高裁判決はこれを変更した。 高裁判決はまず、親権者を決める際には「これまでの養育状況や、子の現状と意思を総合的に考慮すべきだ」と指摘。面会交流について「離婚後も円満な親子関係を形成する有効な手段だ」と認めつつ、「父母の面会交流の意向だけで親権者を決めるべきではなく、他の事情より重要だとも言えない」と述べた。 その上で、「年100日」とする父親の提案では「長女の体への負担のほか、学校や友達との交流にも支障が生じる」と指摘。「月1回程度」という母親の提案は「不十分ではない」とした。長女が「母親と一緒に暮らしたい」と言っていることについては、「母親の影響が及んでいるとみられるが、一緒に暮らすことが長女の意思に反するという事情は見当たらない」と述べた。 長女の現在の養育環境に問題はなく、引っ越しや転校をして環境を変える必要性もないことから、「長女の利益を最も優先して考えれば、母親を親権者とすべきだ」と結論づけた。 判決後に会見した母親の代理人は「判決を聞き、とにかく安堵(あんど)致しました。娘のためにも夫婦間の争いは過去のこととして新しい人生を歩みたい。夫にも穏やかな気持ちで娘に再会して欲しいと願っています」との母親のコメントを読み上げた。弁護団の斉藤秀樹弁護士は、「極めて常識的な判決。親の利益ではなく、子の利益に立つという裁判所の考え方が改めて示された」と話した。 父親も会見し、「紋切り型の判決で非常に憤りを覚える。娘に会えない状況が続くことになり、最高裁には迅速に審理して欲しい」と上告する意向を示した。代理人の上野晃弁護士は「従来通り継続性だけを重視した判決。先に子を連れ去り、もう一方の親の悪口を吹き込めばよいということになってしまう」と批判した。