【2月8日 時事通信社】イスラム圏7カ国国民らの入国を一時禁止した米大統領令を暫定的に差し止めたシアトルの連邦地裁命令の是非を問う訴訟で、サンフランシスコ連邦高裁は7日、電話での口頭弁論を開き、当事者であるトランプ政権側と、ワシントンなど2州側から意見を聴いた。判事3人は双方を厳しく追及し、政権側弁護士が弱気な発言をする場面もあった。入国禁止令の当面の行方を決める高裁判断は週内にも出る見通しだ。 米メディアによると、連邦高裁の管轄区から無作為に選ばれた3人の判事が合議で判断を下す。3人は、カーター元大統領、ブッシュ元大統領(子)、オバマ前大統領がそれぞれ選んだ。高裁判断は全米で注目されており、裁判所がインターネット上に公開した音声中継は13万人以上が視聴したほか、約1時間の審理を全て中継するテレビもあった。 審理で政権側は、入国禁止令は「大統領に認められた権限だ」と主張。州側は差し止めが取り消されれば、「大混乱」を再び招くと訴えた。 判事3人からは質問が矢継ぎ早に飛んだ。入国が規制された7カ国とテロとの関係を裏付ける証拠があるかと問うと、政権側弁護士は明確な答えを回避。判事は、控訴したのは政権側だと指摘し、証拠を提示しない政権側に不満をにじませた。追及が続く中、政権側弁護士が「裁判所を説得できているか自信がない」と弱音を漏らす場面もあった。 州側に対しては、別の判事が自身の推定として、7カ国のイスラム教徒は世界全体の15%未満と指摘。「イスラム教徒の大半は影響を受けていない」として、訴訟で信教の自由を争点化することに疑問を投げ掛けた。 高裁判断は近く下される見通しだが、敗訴した側は連邦最高裁に上告するとみられる。ただ、現在最高裁(定員9、1人欠員)は保守派とリベラル派の判事が4対4で拮抗(きっこう)し、決定に至らない可能性がある。その場合は高裁判断が維持される。 一方、シアトルの連邦地裁ではワシントン、ミネソタ両州が大統領令は違憲として、無効化を求める訴訟も進行中。緊急性が考慮されて審理が迅速に進んだ差し止め請求に対し、この訴訟は最高裁まで争われれば、相当の時間を要する見通し。 ただ、7カ国の入国禁止措置は90日間の期限付き。政権はその間に入国審査の在り方を検討するが、裁判が長期化すれば、司法判断の確定を待たずに、審査の方針が固まる可能性もある。(c)時事通信社