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ISS:金井宇宙飛行士「不安ない」 10月から半年滞在

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10月から約半年間、 国際宇宙ステーション(ISS)での 滞在を予定している金井宣茂(の りしげ)宇宙飛行士(40)が28日、 毎日新聞の 取材に応じ、 「仕事に関して不安はない」 と穏やかな表情で語った。 一足先に初飛行を終えた同期の 油井亀美也(47)、 大西卓哉(41)両飛行士から宇宙生活の コツも教わったそうで、 待ちに待った初飛行へ準備は万全の ようだ。 【聞き手・ 阿部周一】
10月から約半年間、国際宇宙ステーション(ISS)での滞在を予定している金井宣茂(のりしげ)宇宙飛行士(40)が28日、毎日新聞の取材に応じ、「仕事に関して不安はない」と穏やかな表情で語った。一足先に初飛行を終えた同期の油井亀美也(47)、大西卓哉(41)両飛行士から宇宙生活のコツも教わったそうで、待ちに待った初飛行へ準備は万全のようだ。【聞き手・阿部周一】
--一時帰国の目的は?
主に地上管制チームとの打ち合わせです。普段は米ヒューストンとモスクワ郊外「星の街」での訓練ばかりで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の担当者と顔を合わせる機会が少ないので貴重です。日中もアフターファイブも一緒に過ごし、人間関係を作っています。
--その後は。
2週間ロシアで訓練した後、4月にまた日本に戻ります。その時はいよいよ、日本の実験棟「きぼう」のスペシャリストとしてみっちり訓練します。
--打ち上げが近づき、訓練内容も徐々に変化が?
そうですね。これまでは1人で授業を受けて、ISSのシステムやソユーズ宇宙船の操縦などを学ぶことが多かったのですが、これからは一緒に飛ぶクルーとのチーム訓練がメインになると思います。
--米露のクルーとは既に気心知れた仲ですか?
実は事情があって、昨年サバイバル訓練などを共にした2人とは同じ宇宙船で行かないことになりました。新しいクルーは顔を知っていますが、仕事のやり方や人間性を理解し合い、チームを作っていく作業はこれからです。
--2011年に宇宙飛行士に認定されてから6年。この間、油井さんと大西さんが初飛行を終えました。長かったですか?
長いのは長いです。でも、別に嫌ではなく、2人のミッションを間近で見て、注意点や改善点を教えてもらえました。準備という点では、2人より十分できました。
--モチベーションをどう保ちましたか?
私はあまり「宇宙飛行ミッションだから特別盛り上がる」という意識がありません。もちろん大きなイベントですが、それだけが飛行士の仕事ではありません。他の飛行士のサポートや開発業務に携わることも仕事です。そこの意識にあまり差はないです。
--油井さんや大西さんから助言は?
かなり細かいアドバイスを受けています。例えば、ISSのお手洗いはすぐ壊れるのですが、使い方にコツがあるようです。変な話ですが、例えば「おしっこは先にした方がいい」のか、「おしっこは我慢した方がいい」のか。
--マニュアルには載っていないでしょうね。
マニュアルに載らない生活のコツみたいなものです。他にも「部屋のお掃除はここからした方がいい」とか、「物をなくしたら、空気の取り入れ口付近を捜せ」とか。そういうマニアックなアドバイスをいただいています。3番目で良かった。
--長期滞在に不安を感じることは?
ISSでの仕事に関しては何の不安もありません。修理・補修や船外活動などの技量と体力を身につける訓練は順調に進んでいます。あとはチームワークですね。クルー同士もそうですが、特に各国の管制チームの人となりや仕事の仕方を知ることが必要です。ISSの運用は管制官が主役。私たちの仕事はある意味、彼らの想像通りに動けるかどうかですから。
--医師出身の日本人飛行士は向井千秋さん、古川聡さんに続いて3人目です。楽しみにしている実験は?
まだ具体的に決まった実験はないのですが、医師出身なので、やはり科学実験の成果やその精度を期待されていると思います。どの飛行士が担当してもうまくいくように設計されてはいますが、背景まで理解して実験すると特別な成功が生まれると思います。たんぱく質合成やマウス飼育実験などJAXA一押しの生命科学実験が滞在中にあれば、積極的に関わりたいです。
--ISSの成果は将来の宇宙利用にどうつながるのでしょう。
私の夢と言いますか、そもそもJAXAに入った理由は「誰でも宇宙に遊びに行ける時代に向けた仕事をしたい」と考えたことでした。今は宇宙飛行士という限られた人しか行けませんが、民間人の宇宙旅行を計画する企業も登場しています。その中で、月や火星を目指したり、長く宇宙に滞在したりするために、宇宙医学は絶対に必要です。
一方で、より大切だと思うのは、宇宙医学を地上の医学に還元することです。例えば、宇宙滞在中は骨や筋肉が弱くなり、ISSでは1日2時間の運動が欠かせません。これに対して最近、運動の強度や方法を変えることで、もっと短い運動時間で維持できないかという研究が進んでいます。老化予防や身体機能の回復につながるかもしれません。他にも、JAXAが地上で行っている閉鎖環境滞在試験では、ストレスや疲労の度合いを簡単に判断できるマーカー(指標)を探しています。そういったものが見つかれば、夜勤が続くおまわりさんや、南極越冬隊の人たち、シフト制で危険を伴う作業をする工場の人などの健康管理にも使えます。
--ISSは24年で終了します。日本は有人宇宙活動にどう関わるべきでしょう?
「ポストISS」においても、日本は世界のトップグループに入っているべきです。ただし、予算規模は小さいので、力を集中する肝のポイントを見つける必要があり、その一つが宇宙医学でしょう。大西飛行士が携わったマウス12匹の生存回収実験は世界初の大成功でした。しかも「0G」(無重力)と「1G」(地上と同じ重力)の対照実験ができるのはきぼうだけ。この強みをさらに伸ばすことが重要です。きぼうは完成から10年近くたち、成果の刈り取り時期を迎えています。成熟した時期にミッションに携われるのは非常にラッキーだと感じます。
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1976年12月生まれ。防衛医科大学校を卒業後、海上自衛隊の医官に。米国留学の際、海軍医から宇宙飛行士になった女性の存在を知り、宇宙飛行士を目指す。08~09年のJAXAの宇宙飛行士候補選抜に応募、963人中3位で次点だったが追加合格。11年7月に宇宙飛行士に認定。趣味は居合道。

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