イラン各地で2017年12月末にかけて、 経済に不満を持つ市民らの 反政府デモが広がった。 強権的なイスラム教シーア派の 支配体制が敷かれるイランで、 民衆が政府に抗議の 声を上げるの は異例
【ドバイ=岐部秀光】イラン各地で2017年12月末にかけて、経済に不満を持つ市民らの反政府デモが広がった。強権的なイスラム教シーア派の支配体制が敷かれるイランで、民衆が政府に抗議の声を上げるのは異例だ。欧米など6カ国とのイラン核合意を主導し、「制裁解除で経済が上向く」と訴えてきた穏健派のロウハニ大統領は苦しい立場に追い込まれる。 30日、イラン・テヘランでデモを行う人々。ソーシャルメディアに掲載された写真=ロイター 反政府デモは12月28日から北東部マシャドなどで発生した。その後、首都テヘランや中部イスファハンなど複数都市に広がり、あわせて数千人が参加したもようだ。 最高指導者ハメネイ師の退陣を求める声も上がり、一部参加者がイラン国旗やハメネイ師の肖像を燃やすなど過激化。警官が一部デモ隊と衝突し、西部ドルードでは参加者2人が死亡した。デモの支持者は交流サイト(SNS)などを通じて広い市民の参加を呼びかけている。各地でネットの遮断が伝えられており、当局が対応を取った可能性がある。 イランでは核合意にともなう関連制裁解除で石油の輸出が増え、経済が上向くとの期待があった。しかし、トランプ米政権が核合意の破棄をちらつかせ、欧州の金融機関がイラン・ビジネスに関わることに及び腰となった。経済は停滞感が強まっている。 国際通貨基金(IMF)によるとイランの実質国内総生産(GDP)の伸び率は16年の12.5%から17年は3.5%程度に鈍化。物価上昇率も一時に比べ改善したとはいえ、10%前後で高止まりする。イランの通貨リアルはじりじりと値を下げ、人々は生活の改善を実感できていない。 デモ参加者の怒りはイランの拡張主義的な外交にも向けられている。英BBCによるとマシャドでのデモで人々は「ガザやレバノンでなくイラン人の生活を」と叫んだ。 トランプ米大統領は30日のツイッターで「抑圧的な体制は永遠には続かず、イランの人々が選択に直面する日が来るだろう」と述べ、デモに参加するイラン人への支持を表明した。 ロウハニ師は17年5月の大統領選で再選を果たしたが、トランプ政権の「反イラン」が鮮明になり、公約である国際融和路線を進めることが難しくなっている。経済や社会の混乱は保守強硬派をかえって勢いづける可能性がある。 イランでは09年、保守強硬派のアハマディネジャド前大統領が再選を決めた選挙での不正疑惑から大規模な反政府デモが発生した。