【ワシントン田中伸幸】 トランプ米政権は2日、 新たな核戦略指針「核体制の 見直し(NPR)」 を発表した。 ロシアや中国に…
【ワシントン田中伸幸】トランプ米政権は2日、新たな核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」を発表した。ロシアや中国による核戦力増強や北朝鮮の核開発などの脅威に対応するため「核抑止力の強化」を宣言。低爆発力の小型核弾頭や核巡航ミサイルの新規開発を打ち出した。米国や同盟国に対する通常兵器やサイバー攻撃など、核兵器を使用しない攻撃に対しても核で反撃する可能性や、核の先制不使用政策を不適切と明記するなど、核使用の選択肢を増やす内容となった。
核超大国の米国は冷戦終結後、世界の核軍縮や不拡散の進展を主導してきたが、中ロなどの動きを受け「世界は大国間の競争に回帰した」との認識を表明。核兵器の役割を拡大する方向へかじを切ることで、軍縮の機運がしぼむ一方、かつての核軍拡競争に逆戻りし、核戦争のリスクを高める懸念が指摘される。
トランプ大統領は同日、声明を出し「安全保障環境の現実的な分析に基づく新戦略で、21世紀の多様な脅威に、的確に柔軟に対応する」と強調。河野太郎外相は3日、「高く評価する」との談話を発表し、米国の核抑止力に依存する日本として歓迎の意を示した。
NPRの公表は「核なき世界」を訴えたオバマ前政権下の2010年以来。トランプ氏が安保政策として掲げる「力による平和」を反映した内容で、小型核の開発を進めるロシアなど各国で進む核の増強や開発に対抗するため、核抑止力強化の必要性を指摘。北朝鮮に対して「米国や同盟国を核攻撃すれば体制は終焉(しゅうえん)を迎える」とけん制した。
局地攻撃を想定した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に搭載する核弾頭を改良し、爆発力を抑えた小型核弾頭にする開発を明記。長期目標として水上艦や潜水艦から発射できる核巡航ミサイルの研究開発にも取り組む考えを示した。
一方、トランプ氏は声明で「核軍縮や不拡散に取り組む」とも述べたが、NPRでは「必要でない限りは核爆発実験は再開しない」との言及以外、具体的な内容は乏しかった。
=2018/02/04付 西日本新聞朝刊=