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現地ルポ うちひしがれる島民

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【パル(インドネシア・ スラウェシ島)武内彩】 インドネシア・ スラウェシ島中部で発生したマグニチュード(M)7・ 5の 地震と津波で大被害を受けた州都パルに9月30日、 入った。 津波で行方不明になった家族を海岸沿いで懸命に捜す人。 崩れ落ちた家屋の 前で立ち尽くす人。 圧倒的な自然の 破壊力の 前に、 島民らはうちひし
【パル(インドネシア・スラウェシ島)武内彩】インドネシア・スラウェシ島中部で発生したマグニチュード(M)7・5の地震と津波で大被害を受けた州都パルに9月30日、入った。津波で行方不明になった家族を海岸沿いで懸命に捜す人。崩れ落ちた家屋の前で立ち尽くす人。圧倒的な自然の破壊力の前に、島民らはうちひしがれていた。
地震があったのは金曜日(28日)午後6時ごろ。海に近い「パル・グランドモール」は、多くの客でにぎわっていた。モールの建物には上階まで津波の痕が残り、周辺の道路にはひしゃげた車やバイクが放置されている。崩れ落ちたモスク(イスラム礼拝所)の緑色のてっぺんの部分も水につかったようだ。
近くに住むアフマッド・ファイサルさん(54)は地震発生時、家族7人と浜辺でココナツを売っていた。これまで感じたことのない大きな揺れが来た後、水平線が盛り上がり、波が迫ってくるのが見えた。妻と孫娘の手を握って逃げたが、波にのまれた。溺れながらも夢中でつかまったのは、ビルの3階部分の壁だった。幸い7人全員がビルに逃げ込めた。暗闇の中、余震が起きるたびに海面が迫ってくるのが怖かった。
午後10時ごろ、ようやく水が腰の高さまで引いたため、家族で山に避難。翌29日、食料と水を求めて山を下りたが、浜辺で何体もの遺体を見たという。
家族は津波を怖がって山を下りられず、ビニールシートで作った急ごしらえのテントで過ごしている。いつまで避難生活が続くのか不安を抱えている。
ファイサルさんは、スラウェシ島南部マカッサルの出身。「パルは地震が多いと聞いていたが、津波のことは知らなかった。地震が起きた時にすぐ海岸から離れておけばよかった」と振り返った。
倒壊した家屋から、使えそうな家財道具を少しでも出そうとする住民の姿もあった。海岸から約30メートル離れた道路沿いで雑貨店を営んでいたロフィアニさん(43)は、被災からこの日初めて自宅へ戻った。だが、土台すら残っていないがれきの山を見て言葉を失った。「何もかもなくなった。元の生活を再建する自信がない」
ロフィアニさんは地震直後に高齢の母親を連れて海岸と逆方向に逃げた。だが、隣の住民は波にのまれ、行方が分からないという。ロフィアニさん宅の近くでは、別の住民男性が、がれきの下から知人の遺体を見つけ、掘り出した布で丁寧に包んでいた。
地震による地滑りなどでパルへ向かう道路は寸断されていたが、通行が可能となり、市内は医療ボランティアや物資を輸送する車やバイクで渋滞が発生している。安全確認などのため閉鎖されていたパル空港も30日に運航を再開した。

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