Tommy Wilkes and Tom Finn [ロンドン 12日 ロイター] – 英国の ラーブ欧州連合(EU)離脱担当相がEUとの 交渉に関する閣議後、 親指を上げてうまくいったというサインを示す
Tommy Wilkes and Tom Finn
[ロンドン 12日 ロイター] – 英国のラーブ欧州連合(EU)離脱担当相がEUとの交渉に関する閣議後、親指を上げてうまくいったというサインを示すと、英通貨ポンドは6日、0.5%近く上昇した。
英国、EU双方が繰り返し否定しているにもかかわらず、英金融サービス企業は離脱後も欧州市場に引き続きアクセスすることが可能になることで合意したと英タイムズ紙が今月報じた記事を受け、ポンドは2017年半ば以降で最大となる1日の上げ幅を記録した。
英国のEU離脱(ブレグジット)交渉が終盤を迎える中、ヘッジファンドはポンドに対して、かなり弱気な姿勢を維持しているため、たとえごく小さなものであっても、突然降ってわいたポジティブなニュースは同通貨に劇的な影響を与えている。
つまりそれは、ポンドの急上昇は、合意という明白な裏付けによる自信というよりも、投資家のポジションを反映している可能性があることを意味している。また、合意が発表された場合には、ポンドが急騰する可能性もあることを示唆している。
「ほんのわずかな良いニュースでもポンドは急上昇する。一方、かなり悪いニュースが十分あったとしても、ポンドと米ドルの為替レートはあまり動かない」と、みずほ銀行のヘッジファンド・セールス責任者ニール・ジョーンズ氏は言う。
離脱の是非を問う2016年6月の英国民投票後に急落して以降、ポンドは、来年3月予定のブレグジットに対して金融市場が抱く心理を示す主な指標となっている。
ヘッジファンドは先週、ポンドの売り持ち(ショート)を8億ドル以上(約910億円)拡大させており、ドルに対するポンドのショートポジションは計46億5000万ドル に達していた、と米商品先物取引委員会(CFTC)のデータは示している。
2017年5月以降で最大となる、9月後半につけたピークの65億ドルからは下げているが、それでも相当な規模だ。同データは不透明な市場において、投資家のポジション全体のごく一部を示しているにすぎない。
ポンドが下落する方に賭けている多くの投資家にとって、それは、何か良いニュースがあった場合、損失をそれ以上出さないよう大急ぎで解消しないと、売り持ちが膨らんで悪化しかねないことを意味している。
ブレグジットを巡る瀬戸際外交が続く中、新たに国民投票が実施される可能性が、今はまだ低いながらも高まりつつある。もし実施されれば、英国がEUに残留する可能性が高まるため、ポンドは上昇するとアナリストは指摘する。
イングランド銀行(英中央銀行)が利上げ観測を一蹴した4月、投資家はポンドに対するショートポジションを増やし始めた。
英国とEUが合意に至らず、無秩序なブレグジットによって英国経済に深刻なダメージを与えるとの懸念が高まる中、投資家は7月以降さらに積み増した。
投資家は今年、ポンド取引で利益を得ることに苦労しており、多くのファンドは様子見の構えで保有量を減らし、結果が予測しづらい離脱交渉の成り行きに賭けることを敬遠している。
今月初めに発表されたロイター調査は、そうした不透明感を反映している。同調査によると、英国とEUが合意に至った場合、ポンドは1.35ドルまで上昇するが、合意に至らなかった場合は1.20ドルに下落すると市場関係者はみていることが分かった。
<一段と激しい値動きも>
だがCFTCのデータや為替トレーダーによると、投資家の全体的なポジションは大量にショートである。
ポンドの実効為替レート は過去40年の平均を16%下回って取引されている。
つまりそれは、もしブレグジット交渉が楽観的な見通しとなれば、ポンドは長期的な価値に基づくと割安に見える可能性があることを意味している。
ブレグジット交渉が合意に至り、英議会で承認されるのかどうかという大詰めを迎える中、為替トレーダーは来月にかけて、ポンド が2017年1月以来となる荒い値動きとなると予想していることがデリバティブ市場は示している。
8月1日以降、ポンドは1日平均0.4%程度と大きな値動きとなっており、下落した日数がやや上昇日より多く、投資家の心理を映し出している。
向こう3─6カ月間のポンドに対する市場の見方は、2016年のブレグジットを巡る国民投票直後に記録した過去最大の下げ幅に近づきつつあることをオプション市場は示している。
「これまでの交渉の歴史は、金融ニュース速報で取引し、相場が大きく動くヘッドラインリスクを警戒するよう示唆している。合意が発表され、英国議会が承認すれば、ポンドが大幅に上昇する機会が生まれるとわれわれは信じている」とバンクオブアメリカ・メリルリンチの通貨ストラテジスト、カマル・シャルマ氏は話した。
(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
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