トランプは、2017年1月20日に行われた大統領就任式の当日から、政策面でもすでにスタートを切った。就任後に早速オバマケアについての大統領令が出された他、ホワイトハウスのウェブサイトも同日に刷新されている。
このウェブサイトでは、トランプ政権における6項目の政策課題が掲載された。トランプは就任演説で、最重要概念として「米国第一」(“America First”)を再三にわたって強調した。その重要性を再認識するためにも、ここではあえて英語を前に置く形で、これらの6項目を紹介したい。
トランプは政策については選挙期間中に「有権者との契約」を発表、当選後の2016年11月21日にはYouTubeの動画を利用して「就任後100日間計画」を発表している。「就任後100日間計画」においては、6つの施策を100日以内に実行に移すと発言している。
今回ウェブサイト上で公開された6項目は、2015年11月の6つの施策よりさらに高範囲のものをカバーしており、選挙時の公約とあわせ3つのタイミングで出された政策課題を時系列で分析することが重要となる。
前回の「大予測! トランプはどんな大統領になるか」( http://president.jp/articles/-/21201 )では、トランプの目的関数(どのような目的を最上位に置いて、行動を行っているかを読み取るための項目)のなかでも、支持率に大きな影響を与えるのものとして優先順位が高いのは、経済状況、内政(移民問題)、外交・安全保障、特にテロや戦争への対応、愛国心、リーダーシップの在り方であると指摘した。
トランプは、「ラストベルト(錆びた一帯)」4州(ペンシルバニア州、オハイオ州、ミシガン州、ウィスコンシン州)の白人労働者層をコアな支持者層として獲得し、さらには就任演説でもこの層を最重要視した。4年後の再選を視野に入れると、米国第一をモットーとして雇用や賃金を中核とする経済対策を積極的に推し進めることが、トランプの政策実行では特に高いプライオリティーをもつだろう。
テロや戦争への対応とリーダーシップの在り方とは、セットで考えるべきものだ。これからの米国においては、真に米国が「強いアメリカ」として介入するべき戦争であるか否かについて、トランプ政権内で緻密な議論が行われるものと考えられる。ただし、そこでの判断基準は、単純に「アメリカはもはや世界の警察ではない」ということではなく、トランプが、米国や世界のトップリーダーとして、つまり「強いアメリカ」のリーダーとしてどのような対応をすべきかというものになると予測される。また、いったん戦うと決めた以上は絶対に勝つということは徹底するはずであり、このスタンスがグローバルにも周知徹底されれば、1つの抑止力として作用することもあるだろう。
今連載の「プロファイリングで探る! トランプの『資質』は大統領に適するか」( http://president.jp/articles/-/21170 )で、トランプの資質のプロファイリングを行ったが、「アメリカはもはや世界の警察ではない」という発言よりも、“Make America Great Again”のスローガンをもとに「強いアメリカを取り戻す」ことが優先されるような気がしてならない。
実際に共和党の複数のメンバーから直接聞いた話によれば、トランプは強いアメリカを取り戻すということにこだわりがあり、世界のなかでも強いリーダーシップを発揮していくのではないかとのことであった。
ここでは詳細は述べきれないが、外交・安全保障上で大きなポイントとなると予想されるものとして、「米国×ロシアvs. IS」のテロとの対決、「中国vs.米国×フィリピン×日本」の南沙諸島、「米国×ロシア×イスラエルvs.イスラム教諸国」の中東、「米国×ロシア×欧州極右勢力vs. EU主要国」を指摘しておきたい。