東京都はなぜ、 土壌汚染が残る豊洲を、 食品を扱う市場用地に選んだの か。 当時知事だった石原慎太郎氏は折々でどんな判断をしてきたの か。 石原氏は3日の 会見で「専門家が決めた」 「任せていた」 「記憶にない」 と連…
東京都はなぜ、土壌汚染が残る豊洲を、食品を扱う市場用地に選んだのか。当時知事だった石原慎太郎氏は折々でどんな判断をしてきたのか。石原氏は3日の会見で「専門家が決めた」「任せていた」「記憶にない」と連発。最高責任者の判断があいまいなまま、土壌汚染対策費が860億円にまで膨らんだ過程が浮き彫りになった。 なぜ豊洲だったのか。石原氏はまず、用意した発言要旨で「1999年に就任して、移転は既定路線であるような話を聞いた」と説明。2001年に東京ガスが豊洲の土壌汚染を公表した時、なぜ移転方針を変えなかったか問われると、「専門家が専門性を駆使して多角的に決めた。私が関与する余地も知見もありません」と述べた。 00~01年、土地売却に後ろ向きだった東京ガスを「(土地価格や開発者負担の交渉は)水面下でやりましょう」と説得したのは、石原氏の側近の浜渦武生副知事(当時)だった。この水面下の交渉で汚染処理などの範囲が協議された可能性があるが、石原氏は「小さなことは(浜渦氏に)任せっきり。一任していた」。具体的な報告も相談も受けていないとした。 08年、外部識者で作る専門家会議の指示を受けた都の調査で、環境基準の4万3千倍のベンゼンなどが豊洲市場予定地で検出された。都は、敷地全面での土壌入れ替えなど、土壌汚染対策法や都条例が求める措置を大幅に超える対応を決め、対策費は現時点で860億円に膨らんだ。東ガスは78億円を負担し、残りは都の負担だ。 都は東ガスと11年に結んだ協定書で、「(東ガス側は)今後、土壌汚染にかかわる費用を負担しない」として、瑕疵(かし)担保責任を放棄。このため膨らんだ処理費用は都が持つことになった。協定書には、石原氏の名前が印字され、知事の押印もあった。 しかし、石原氏は「瑕疵担保の話は(昨年10月に小池百合子都知事名で)都から質問され初めて知った」と説明。協定時に説明を受けなかったのか聞かれると、「専門的すぎて交渉の当事者にゆだねるしかない」。協定書に押印した記憶はないという。 1時間余の会見で「専門家ではない」「任せていた」「聞いていない」と繰り返した石原氏。会場から「何のために知事がいるのか」と問われると、「知らないものは知らないし、任せるしかない」と強調した。 石原氏が「瑕疵担保責任の報告を受けていない」と名を挙げた元都知事本局長の前川燿男・東京都練馬区長は「瑕疵担保責任を放棄したのは、私が(05年に)都を退職した後。事実関係や時間の前後関係が混乱している。とばっちりだ」と話した。