中央アフリカの ウンヨロ王朝の 王は重病になるとすぐ妻たちに殺された。 王が自然死すると王朝が途絶えると信じられたの だ。 英人類学者フレーザーが「金枝篇(きんしへん)」 で述べる「王殺し」 の 一例である▲フレーザーによれば、 王の 霊力の 衰えは部族全体を衰亡させると考えられたの である。 南アフリカの カフィル族の 王は雨や太陽を操る神の ような存在とされたが、 歯が1本欠けただけでも殺されたという。 同じくズールー族の 王には白髪や顔の…
中央アフリカのウンヨロ王朝の王は重病になるとすぐ妻たちに殺された。王が自然死すると王朝が途絶えると信じられたのだ。英人類学者フレーザーが「金枝篇(きんしへん)」で述べる「王殺し」の一例である▲フレーザーによれば、王の霊力の衰えは部族全体を衰亡させると考えられたのである。南アフリカのカフィル族の王は雨や太陽を操る神のような存在とされたが、歯が1本欠けただけでも殺されたという。同じくズールー族の王には白髪や顔のしわは死の前兆だった▲それで王のなり手がいたのかと思うが、後継者が王殺しをする習慣もあった。さて、こちらは今の韓国、親友の国政介入事件で政治的霊力の尽きた大統領がついに罷免(ひめん)された。身内や自身のスキャンダルで世論に見放された近年の歴代大統領の末路も思い起こされよう▲朴槿恵(パククネ)大統領への国会の弾劾訴追を審理していた韓国の憲法裁判所が全員一致で言い渡した罷免決定である。当日は弾劾反対派も大規模デモを行ったが、憲法裁の判断は国政介入事件を「国民への裏切り」と糾弾して燃え上がった世論を法的に裏打ちしたものだった▲すでに60日以内に行われる大統領選に焦点が移った韓国政局だが、朴政権を葬った野党の2候補に勢いがあるのは成り行きだろう。だが北朝鮮の挑発が続く中、もし外交でも朴政権の施策を全面的に覆すような新政権が生まれれば東アジアの安定も揺るがしかねない▲それにしても在任中にせよ、退任後にせよ国民の選んだ大統領がことごとく国民の罵声(ばせい)を浴びる末路をたどるのはどういうわけか。韓国国民にはどうかこの辺で断ち切ってほしい王殺しの連鎖だ。
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