【カイロ篠田航一】 サウジアラビア政府に批判的な米国在住の サウジ人ジャーナリスト、 ジャマル・ カショギ氏がトルコ・ イスタンブールの サウジ総領事館を訪問後に行方不明になった事件で、 サウジ検察当局は20日、 国営メディアを通じて「カショギ氏が総領事館で死亡した」 と公式に認めた。 総領事館内で起きた口論と殴り合
【カイロ篠田航一】サウジアラビア政府に批判的な米国在住のサウジ人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館を訪問後に行方不明になった事件で、サウジ検察当局は20日、国営メディアを通じて「カショギ氏が総領事館で死亡した」と公式に認めた。総領事館内で起きた口論と殴り合いの結果で意図的な殺害ではなかったと主張している。当局は関連してサウジ国籍の18人を拘束。サルマン国王(82)は事件に関係したとして王室や政府の高官ら5人を更迭した。
当初は事件への関与を否定したサウジ当局だが、一転して責任の一端を認めたことで早期の事態収拾を図りたい思惑があるとみられる。だが外交施設内での記者殺害疑惑という前代未聞の事件が国際社会に与えた衝撃は大きく、サウジ政府への批判が高まるのは必至だ。
サウジ当局は暫定調査結果の発表で、事件について「深い遺憾の意」を表明し、法廷での手続きを経て責任者を処罰すると明らかにした。更迭された5人の中にはムハンマド皇太子(33)の右腕と報じられる王室顧問や情報機関ナンバー2が含まれているが、サウジ当局者はロイター通信に「皇太子はこのオペレーションについて知らなかった」と説明した。
カショギ氏は今月2日、トルコ人女性との再婚に向けた書類手続きのため総領事館を訪問後、消息を絶っていた。同じ日に総領事館に送り込まれたサウジ人の「暗殺チーム」がカショギ氏を殺害し、ばらばらにした上で遺体を運び出したとの見方もあり、トルコとサウジの合同捜査チームが15日に館内を捜索。トルコ高官はAP通信に「殺害の証拠が見つかった」と述べていた。
当初、サウジ側は「カショギ氏は総領事館を立ち去った」と主張したが、映像などの証拠を示さず、事件現場となったトルコや同盟国・米国からも真相究明を求める声が高まっていた。事件を受け、23日からサウジの首都リヤドで開かれる経済会議にムニューシン米財務長官やラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事、欧米企業のトップが次々に欠席を決めるなど、国際的にも波紋が広がっていた。
サウジでは現在、高齢のサルマン国王の実子のムハンマド皇太子が事実上の実権を握り、石油依存型の経済からの脱却を目指す改革を主導。今年に入り、従来は禁止だった女性の自動車運転や映画館上映を解禁するなど一定の自由化を推進してきた。その一方、政敵の王族や実業家を一斉に拘束する強権姿勢も加速させており、「言論の自由」を封殺する動きも指摘されていた。
カショギ氏は昨年9月に渡米し、米紙ワシントン・ポストなどにサウジ政府の政策を批判する内容の記事を寄稿していた。