民法の 規定などの 影響で戸籍を持たない人の 解消に向け、 法務省は21日、 各地の 法務局に、 家庭裁判所や弁護士会による連携組織の 新設を指示するなど新たな対策に乗り出した。 全国の 市区町村に対しても無戸籍者の 情…
民法の規定などの影響で戸籍を持たない人の解消に向け、法務省は21日、各地の法務局に、家庭裁判所や弁護士会による連携組織の新設を指示するなど新たな対策に乗り出した。全国の市区町村に対しても無戸籍者の情報収集を徹底するよう改めて求める。 戸籍は、日本人が生まれてから死亡するまでの情報を登録し、証明する。戸籍がないと原則、住民票やパスポートを作れず、選挙権も与えられない。義務教育を受けていない例もある。 だが、同省によると、調査を始めた2014年7月から今年10月まで1495人の無戸籍者を確認した。主な原因は「婚姻中に妊娠した子は夫の子」「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」と推定すると定めた民法772条の規定だ。同省によると、現在把握する715人の無戸籍者の約75%(537人)が、同条の適用を避けるため、母親が出生届を出していなかった。 離婚成立前に生まれた子や、離婚後300日以内に生まれた子を実の父の子とする戸籍を作るには、元夫を相手取り、親子関係がないことの確認を求めるなどの裁判を起こす必要がある。ただ、裁判手続きを詳しく知らない▽裁判にかかる費用が払えない▽DVが原因で別れたため元夫と裁判で接触したくない――などの理由でためらう人もいるという。 家族の関係を定めた民法の規定を巡っては、「女性は離婚して6カ月間は再婚禁止」という点について、最高裁大法廷が15年に100日を超える期間の部分を「違憲」と判断し、法律が改正された。一方、772条の規定は法改正の目立った動きがない。同省は今回、全国50の法務局・地方法務局に対し、弁護士会や法テラス、家裁とともに「地方協議会」を新設するよう指示した。これまでも法務局の担当者は当事者に戸籍の作成を促し、裁判手続きの案内、手伝いにあたってきたが、具体的な裁判例や裁判費用の支援制度については知識が不十分だった。今後は実例を把握する弁護士会、裁判費用の立て替えなどの業務にあたる法テラス、裁判例や審判例の知識が豊富な家裁が、それぞれのノウハウを協議会で共有。各機関が連携して、無戸籍を解消する仕組みづくりを目指す。 上川陽子法相は21日の閣議後会見で、「無戸籍者は国民としての社会的な基盤が与えられておらず、社会生活上の不利益を受けるという人間の尊厳にも関わる重大な問題が生じている。取り組みを強化し、問題解消に一層尽力していく」と述べた。( 小松隆次郎 、山本亮介)