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【まとめて読む】高校の同級生、2人で禁煙に挑戦

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沖縄県に住む平仲佳子さん(46)と同級生の 高江洲孝代さん(46)は2015年、 20年以上吸ってきたたばこを一緒にやめることにしました。 診療所の 禁煙外来を受診し、 飲み薬の 助けを借りながら約5カ月間禁煙…
沖縄県に住む平仲佳子さん(46)と同級生の高江洲孝代さん(46)は2015年、20年以上吸ってきたたばこを一緒にやめることにしました。診療所の禁煙外来を受診し、飲み薬の助けを借りながら約5カ月間禁煙を続けました。「もう禁煙できた」。そう思っていたころ、友人からもらったたばこをきっかけに2人とも喫煙を再開してしまいます。やめられない自分に挫折感を味わった2人。それから1年半後の今年1月、同じ診療所を受診し、再び禁煙に挑戦しています。 ■2人でクリニックへ 「調子はどう?」 今年2月下旬、沖縄県沖縄市のちばなクリニックの禁煙外来で、担当医の山代寛(やましろひろし)さん(56)が、椅子に並んで腰掛ける2人の女性に語りかけた。 「吸いたくないけど、周りの人が吸うんです」。そう答えたのは、平仲佳子(ひらなかけいこ)さん(46)。嘉手納町の米軍基地内の飲食店で働く。 「体重が増えました」。隣に座る高江洲孝代(たかえすたかよ)さん(46)が笑って続けた。読谷村で介護福祉士の仕事をしている。 2人は高校からの友人で、誕生日も同じ。ともに敬虔(けいけん)なクリスチャンで、いまも週に1度、教会の礼拝で顔を合わせる。 2人とも20年以上たばこを吸ってきた。「体に悪いよなあ」と思いながらもやめられなかった。「神様に祈ったらやめられた」と言うクリスチャン仲間もいる。平仲さんが「私、祈ってもやめられないよ」と言うと、高江洲さんが「神様のせいじゃないよ」と返す。冗談めかして言ってはみるものの、自力でやめられないうしろめたさがあった。 最初に禁煙に挑んだのは平仲さんだ。仕事を終えて帰宅すると、晩酌しながら寝るまでに10本は吸っていた。そんな毎日が続くなか、禁煙に成功した同僚から禁煙外来の存在を教えてもらった。2015年4月、1人で受診し、禁煙補助薬「チャンピックス」を処方してもらった。 薬に含まれる成分がニコチンの代わりに脳の受容体にくっつき、たばこを吸いたい欲求を抑え、吸った時の満足感を感じにくくさせる。医師の診察を定期的に受けながら12週間服用するのが基本だ。 平仲さんは薬を服用した初日から吸いたい気持ちがなくなった。 「クリニックに行ったよ」。受診からほどなく、電話で高江洲さんに報告した。 平仲さんの受診は、高江洲さんの背中も押した。小学校の授業で、たばこの危険性を学んだ次男から「たばこは体に悪いんだよ」と説教を受けたこともあり、いつかやめなければと思っていた。 平仲さんの2回目の受診となる5月9日、高江洲さんも一緒にクリニックを受診することにした。 ■吸いたい欲求、失せたが 沖縄県に住む平仲佳子さん(46)と、高校時代の同級生、高江洲孝代さん(46)は2015年5月、2人で沖縄市のちばなクリニックにある禁煙外来を訪れた。平仲さんは2回目、高江洲さんは初めての受診だった。 主治医の山代寛さん(56)は「来てくれた時点で、まず禁煙は成功です」と、2人を出迎えた。夫婦や友人同士で一緒にやめようと、そろって受診にくることは、珍しいことではない。 高江洲さんもここ数年、やめたいと思ってきた。40歳を過ぎ、疲れやすくなって体の衰えを感じていた。2人の誕生日である8月6日までに「互いに禁煙を成功させよう」と言い合って受診した。 山代さんは、高江洲さんの呼気に含まれる一酸化炭素の濃度を測った。たばこの煙を吸った際に肺に取り込まれ、1日に吸うたばこの本数が多いほど、数値が高くなる。高江洲さんは20??。喫煙者の標準的な値だった。一足先に受診した平仲さんと同様、吸いたい欲求を減らす効果のある禁煙補助薬チャンピックスを処方した。 高江洲さんは、チャンピックスを飲むと胸がムカムカして気持ち悪くなった。介護福祉士として施設で働いていたが、仕事もおぼつかないくらい気持ち悪い。それでも、たばこを吸いたい欲求がすっかり失せ、「これでやめられるんだ」と思うとうれしくなった。クリニックを受診する度に山代さんが「前向きに楽しんで」「つらさがずっと続くわけではないから」と励まし続けてくれた。 晩酌と一緒にたばこを吸う習慣のあった平仲さんも、チャンピックスを飲むとたばこを吸いたい気持ちはなくなった。同時に、酒も飲みたいと思わなくなった。体が軽くなった気がして、気持ちも少し上向きになった。ただ、職場の飲み会で喫煙者から「吸う?」と聞かれて断ると、申し訳ない気持ちになった。 2人は7月4日に受診したのを最後に、クリニックに行くのをやめてしまった。チャンピックスを飲まなくても、禁煙を続けることができると思ったからだ。 「もう大丈夫。やめられた」 そう思っていたが、意外なところに落とし穴が待っていた。 ■戻った習慣、自己嫌悪 2015年春、沖縄県沖縄市のちばなクリニックの禁煙外来を訪れ、禁煙を始めた高江洲孝代さん(46)と同級生の平仲佳子さん(46)は、7月の受診を最後に通院するのをやめた。 処方された禁煙補助薬チャンピックスを飲まなくても、たばこを吸いたい欲求は起きなかった。8月、2人は禁煙したまま無事、45歳の誕生日を迎えた。当初の目標だった「誕生日までに禁煙成功」を成し遂げたかに見えた。 だが、落とし穴が待っていた。 翌月、高江洲さんは、次男が所属する野球チームの母親の飲み会に参加した。普段は飲まないワインを炭酸で割ると、おいしくて、数杯飲んでしまった。 ほろ酔い気分で店を出ると、友人の母親が、細いメンソールのたばこを箱から取り出した。「吸うけどほしい?」と聞かれた。「いいの?」。手が伸びた。 5月に禁煙して以来、4カ月ぶりに吸うたばこ。おいしいと思った。2本もらってその場で吸い、別れ際に家で吸いたいからと、さらに1本もらって帰った。翌朝、仕事に出かける前に吸った。 「朝1本だけなら大丈夫」。自分に言い聞かせた。朝だけのつもりが昼にも吸い、翌日、コンビニエンスストアで1箱買った。 たばこを再開してしまったことに高江洲さんは自己嫌悪に陥った。「たばこの縛りから逃れられないのか」と思うと絶望した。 平仲さんも同じだった。 9月、教会へ礼拝に出かけた日曜日、知人から1本もらって吸ってしまった。翌日、仕事中は我慢したが、終わると喫煙者の同僚のいる職場まで車を運転して出かけ、1本だけもらった。火をつけ、煙を肺いっぱい吸い込んだ。 「箱だけは買うまい」。その気持ちは堅く、3週間ほどは同僚や知人から1本ずつもらう生活を続けていたが、結局、箱を買うようになった。 晩酌の習慣も戻った。夜、たばこを吸いながらテレビを見ていると、むなしさがこみ上げてきた。もう大丈夫と思っていたのに、やめられたと思っていたのに、どうしてまた手を出してしまったのか。「私は一生、たばこの呪いから逃げられないのだろうか」 ■挫折経て、決意の再禁煙 2人で禁煙に挑戦した沖縄県の平仲佳子さん(46)と高江洲孝代さん(46)は2015年、約5カ月間の禁煙にいったんは成功したものの、9月から再びたばこを吸うようになった。 喫煙再開から1年半、2人は以前と同じペースで1日1箱近く吸う生活に戻っていた。だが、完全に禁煙をあきらめたわけではなかった。クリスチャンの2人が通う教会で、2度目の治療で禁煙に成功した知人から「ぜひ再度、挑戦して欲しい」と勧められたのも大きかった。 ただ、禁煙治療後に喫煙を再開した場合、前回の治療開始から1年以上あかないと、次の治療時に公的医療保険が適用されない。2人は保険が適用できるようになってから、新たな気持ちで禁煙に挑戦しようと、2017年の年が明けるのを待った。 17年1月下旬、2人はちばなクリニック(沖縄市)の禁煙外来を再び訪れた。前回の禁煙治療から約1年半がたっていた。 「よく来ましたね」。主治医の山代寛さん(56)が出迎えた。「今回もよろしくお願いします」と2人。禁煙失敗を報告するという恥ずかしさもあったが、山代さんのにこやかな表情と「あきらめないのが大事」という言葉に救われた。山代さんは、禁煙治療をしても1年以内に半分の人は再発してしまう、と2人に説明した。 「禁煙できる自信は、どのくらいですか」と、2人に尋ねた。禁煙を達成しようとする気持ちを、何が阻んでいるのかを探るきっかけになる。 高江洲さんは「98%」と答えた。ほぼ確実にやめられると思った。ただ、周りにたばこがあったら、以前のように再び手を伸ばしてしまうかも知れないという不安を差し引いた。そんな気持ちを聞きながら山代さんは再びチャンピックスを処方した。「一度やめようと頑張って再開した人は、どのタイミングで吸ってしまうのかをよくご存じ。失敗の経験は無駄ではないですよ」と説明した。 2人は改めて「禁煙宣言書」に署名した。まだ前回の禁煙期間を超えられてはいないが、順調なら4月半ばには薬を卒業できる。「今度こそ」。挫折を経た2人の決意は固い。 ■情報編 禁煙しやすい環境、カギ 喫煙するうちにやめられなくなるのは、たばこに含まれるニコチンという依存物質のせいだ。血液に溶けたニコチンが脳にある受容体(レセプター)にくっつくと、ドーパミンというホルモンが放出され、気分が良くなる。そのうち、ニコチンが常に体内に一定濃度ないとイライラしてくる。 「依存度をみるために、患者に起床後何分で喫煙するかを尋ねます。起きてすぐ吸う場合はそれだけ依存が進んでいる証拠」と話すのは、20年以上禁煙治療に携わってきた津谷隆史(つやたかふみ)・津谷内科呼吸器科クリニック院長(広島市)。 喫煙は、がん以外にも、肺気腫やCOPDなど呼吸器の病気、動脈硬化など循環器の病気などのリスクを高め、煙にさらされる周りの人の健康にも影響する。 放射線影響研究所(広島市)などによる日本人約7万人の調査では、喫煙者の平均寿命は8~10年短かった。一方、35歳以前に禁煙すると、喫煙を続けた場合の病気のリスクをほとんど避けられるという。45歳以前の禁煙でも多くのリスクを回避できるという。 連載で紹介した高江洲孝代さんと平仲佳子さんは飲み薬のチャンピックス(一般名バレニクリン)を服用しながら禁煙に挑んだ。高江洲さんと平仲さんの主治医の山代寛・沖縄大教授は「薬の登場で以前より禁断症状に苦しまずに禁煙できるようになった」と話す。 主な薬はガム、貼り薬、飲み薬の3種類=図。ガムと貼り薬にはニコチンが含まれ、たばこの代わりに体内にニコチンを一定期間取り入れて離脱症状を和らげる。薬局で買えるが、高用量の貼り薬は医師の処方が必要だ。貼り薬はかゆみを感じる人もいる。飲み薬のバレニクリンはニコチンの代わりに脳の受容体にくっつく成分を含み、吸いたい欲求やおいしいという気持ちが減るのをねらう。服用後に胃の不快感や眠気を感じる人もいる。医師の処方が必要だ。 ただ、治療開始1年後の禁煙継続率は、飲み薬も貼り薬もほぼ同じという報告もある。どんな環境で生活するかが禁煙継続のカギとなるようだ。山代さんは「治療だけでなく法律で禁煙しやすい環境を整備することが、たばこで苦しむ人を減らすことにつながる」と話す。 <アピタル:患者を生きる・依存症> http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/ (錦光山雅子)

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