【ソウル=上野実輝彦】 韓国の 朴槿恵(パククネ)前大統領(65)の 友人による国政介入事件を捜査しているソウル中央地検は三十一日未明、 収賄などの 容疑で朴前大統領を逮捕した。 韓国で大統領経験者の 逮捕は、 一九九五年の 盧泰愚(ノテウ)氏、 全斗煥(チョンドファン)氏に次ぎ三…
【ソウル=上野実輝彦】韓国の朴槿恵(パククネ)前大統領(65)の友人による国政介入事件を捜査しているソウル中央地検は三十一日未明、収賄などの容疑で朴前大統領を逮捕した。韓国で大統領経験者の逮捕は、一九九五年の盧泰愚(ノテウ)氏、全斗煥(チョンドファン)氏に次ぎ三人目。地検は朴容疑者に対する任意の事情聴取を経て二十七日、ソウル中央地裁に逮捕状を請求。朴容疑者は容疑を全面的に否認しており、ソウル中央地裁は「主要な容疑が立証され、証拠隠滅の恐れがあり、拘束の必要性が認められる」として請求を認めた。 地検は四月中旬までの起訴を目指す方針で、裁判で高額の収賄罪が認められれば、無期懲役の判決が下される可能性もある。前大統領の逮捕は、五月九日投開票の次期大統領選で、野党陣営の優位をさらに後押しするとみられる。 国政介入事件では朴容疑者に、韓国の財閥に圧力をかけ、友人の崔順実(チェスンシル)被告(60)が実質支配する財団へ七百七十四億ウォン(約七十七億円)の資金を提供させた職権乱用や強要▽大統領府の機密文書を崔被告に漏らした公務上の秘密漏えい▽サムスングループ内の企業合併を後押しし、見返りに崔被告への支援の形で約束分も含め四百三十億ウォンの賄賂を受け取った収賄−など計十三件の疑いがかけられていた。 ソウル中央地検は昨年十一月、崔被告を職権乱用や強要罪で起訴。国会の設置した特別検察官チームは今年二月、サムスン電子副会長の李在鎔(イジェヨン)被告(48)を贈賄罪で起訴し、いずれも朴容疑者の共謀があったと認定していた。 韓国の国会は昨年十二月に朴容疑者の弾劾訴追案を可決。憲法裁判所は今月十日、「重大な違法行為」があったとして罷免し、朴容疑者は不訴追特権を失っていた。 ◆拘束求める世論強く <解説> ソウル中央地裁が韓国前大統領・朴槿恵容疑者の収賄容疑での逮捕状発付を認めたのは、身柄拘束を求める国内世論の強さに加え、現職大統領として史上初めて罷免された重大性を勘案したためとみられる。 朴容疑者に対しては検察当局が、財閥のサムスングループから賄賂を受け取ったことを含め十三件の疑いをかけていた。内乱罪などに問われた元大統領の盧泰愚氏や全斗煥氏と比べると、有罪時の量刑自体は軽いものの、疑惑の多さでは群を抜いている。 加えて、昨年十月の国政介入事件発覚以降、朴容疑者は国政の混乱については謝罪したものの、事件の詳細を直接説明したことはなかった。 罷免される前は検察の事情聴取に応じず、大統領府への家宅捜索も拒み続け、地裁は、証拠隠滅の恐れがあることを逮捕状発付の認定理由に挙げた。 国民の不信感は依然根強く、今月二十三日発表の世論調査で、朴容疑者の逮捕に賛成する人は72%に上った。 朴容疑者は今後、起訴され、公判に臨む見通しで、このまま全面否認を貫き通せば、厳しい判決が下される公算が大きい。 (上野実輝彦) (東京新聞)