大飯原子力発電所3、 4号機(福井県おおい町)の 運転差し止め訴訟で名古屋高裁金沢支部が4日、 周辺住民らの 訴えを退け、 関西電力 は高裁レベルで勝訴を積み重ねた。 安全性の 立証に自信を深めており、 他に抱える6件の 原発訴訟の 行方にも追い風になるとみている。 原発再稼働による収益改善で7月から…
大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止め訴訟で名古屋高裁金沢支部が4日、周辺住民らの訴えを退け、 関西電力 は高裁レベルで勝訴を積み重ねた。安全性の立証に自信を深めており、他に抱える6件の原発訴訟の行方にも追い風になるとみている。原発再稼働による収益改善で7月から電気料金の抜本値下げしており、反転攻勢を進める。
岩根茂樹社長は株主総会後の記者会見で原発の重要性を改めて訴えた(6月27日、大阪市北区)
今回の判決を受けて関西電力は4日、「安全性について科学的・専門技術的知見に基づく説明を裁判所にご理解いただいた結果である」とコメントした。
福島第1原発事故以前から原発への経営依存度が高かった関電は、事故後、司法判断に経営を大きく左右されてきた。16年3月には大津地裁が高浜原発3、4号機(福井県高浜町)への運転差し止めの仮処分を決定。同年2月に再稼働に伴う5月からの値下げを発表していたが、撤回せざるをえなくなった。結局高浜3、4号機の再稼働や値下げは大阪高裁が仮処分命令を取り消す17年までもつれこんだ。
今回関電は三審制の裁判全体に大きな影響がある高裁レベルで勝訴を重ねたことで、地震や津波の安全対策の説明などに手応えを得ている。大飯3、4号機の5月までの相次ぐ再稼働で、関電は昨夏までの高浜3、4号機をあわせた4基稼働体制を確立した。
今年7月の2度目の抜本値下げで家庭向けでは大手電力間でもトップに肉薄する安さとなり、相対交渉の企業向けでも安値で新電力に奪われた顧客の取り戻しや既存顧客の囲い込みに動いている。
関電は原発の運転差し止めなどを求める訴訟は本件を除き6件抱えている。ただ判例を積み重ねたとはいえ、即効性のある運転差し止めの仮処分などによる原発停止の可能性は依然として残っている。(中西誠)