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◇痛み慣れと頑丈自慢〔写真特集〕日馬富士 大相撲の 地方3場所で最も集客に苦労する九州場所で、 今年は21年ぶりに15日間満員御礼が確実視されている。 先発隊をはじめとする日本相撲協会の 営業活動、 若手力士の 台頭などさまざまな努力の 成果だが、 そんな場所に横綱が泥を塗っ
◇痛み慣れと頑丈自慢
〔写真特集〕日馬富士
大相撲の地方3場所で最も集客に苦労する九州場所で、今年は21年ぶりに15日間満員御礼が確実視されている。先発隊をはじめとする日本相撲協会の営業活動、若手力士の台頭などさまざまな努力の成果だが、そんな場所に横綱が泥を塗った。 日馬富士の幕内貴ノ岩に対する暴行。本人は事実関係を認めて師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)ともども謝罪しており、相撲協会は危機管理委員会を中心に事実関係などを詳しく調べた上で、処分を協議する。表沙汰になるまでの経緯には不自然さも感じないではないが、詰まるところ、日馬富士が暴力を振るわなければ何事もなかった。 格闘技はそれ自体、お互いに体で相手の体に痛みを与え合うものだから、競技者が体の痛みに慣れている。激しい気性の持ち主も多い。しかも相撲界の人たちは、とかく自分たちの体がいかに超人的かを自慢する。酒豪、大食漢、怪力。その延長に「親方がゴルフクラブでひっぱたいても、あざ一つできなかった」とか「お相撲さんの頭は中華鍋で殴ったぐらいじゃ平気」といった話も出る。冗談好きな人たちだからどこまで本当か分からないが、痛みに対する慣れと頑丈自慢の表れといえる。 2010年、朝青龍が一般男性にけがをさせて引退に追い込まれたのは記憶に新しい。共通点は力士の手本になるべき横綱の所業であること、酒席で起こしたこと。「酒の席だから」と弁解できたのは過去の話。この2点だけでも責任は重い。 違いは今回の相手が力士仲間であることだが、そこに、力士同士が共有する痛みに対する慣れ、頑丈さへの安心感から来る気の緩みがなかったか。格闘技の世界の暴力は、そうした「生態」をもっと重く見て考えていく必要がありそうだ。 ◇危うい相撲ブーム そしてもう一つ、現在の相撲人気に対する気の緩みはなかったか。「せっかく先場所の逆転優勝で称賛されたのに」と嘆いた親方がいたが、3横綱休場の窮地を自らの優勝で切り抜けたおごりが、日馬富士になかったか。 ついこの間まで、世間でも暴力や体罰を「愛のムチ」や「けんか」と言っていたくらいだから、力士同士の暴力沙汰など珍しくなかった。当時のファンは、そうした粗暴さや、ともすれば「黒い交際」も、これが相撲界と割り切って許容し、その代わり相撲内容にも厳しい目を向けたが、今日の相撲ブームは、観客の層も見る目も変わりつつある。 福岡県篠栗町から来た川端律子さん(48)は「残念ですよ。日馬富士はちょっと厳しそうな印象があったけど、それでも横綱は神様ですからね」と話した。連れていた友人の息子は2歳4カ月。最近、四股を踏み始めたという。 3年ほど前から夫と毎年来ている宮本良子さん(33)=熊本市=は、7カ月の長男を抱きながら「日馬富士は優しそうなイメージが崩れてしまいました。2、3日前に横綱の中で誰が一番好きかという話になって、私は日馬富士だと言ったのに」と残念がった。 「お相撲さん 気は優しくて 力持ち」が今日の、特に女性や子どものファンが抱くイメージだろう。力士たちにも、気のいい青年が増えた。かつてのように、混雑した支度部屋で気の荒い付け人に払いのけられることなどめったにない。ましてファンに対しては、にこやかに優しく接する力士が多い。そこには時代の変化とともに、不祥事続きで升席がガラガラだった時期の苦い経験が生きている。 そうした「イメージ」で成り立っている相撲人気に、先場所は3横綱休場、今場所はこの騒ぎと、頂点に立つ者が水を差した。横綱の品格などという特別であいまいなものより前に持つべきは、世の中のリーダーたちと同じように、自分が今、何をしたらどうなるかという想像力だろう。(時事ドットコム編集部)(2017/11/14-20:04) 関連ニュース
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